雅紀の言葉が頭に響く。


『潤くんは利用されてるだけだよ』



ああ・・・そうなんだ。

雅紀の言った通りだったよ。

はは。

馬鹿みてぇ。

ひとりで支えてる気になって、あなたの為ならなんでもするって言いながら

心のどっかでいつかは愛されるかもなんて夢見て。


めでたすぎるよ。


悲しいとかそんな感情より空しくていっそ笑えてくるよ。





「・・・ねぇ」

翔くんが俺の腰に手をまわす。

ぐっと抱き寄せられ、我に返った。


「やだ・・・っ!」

「ペットなら逆らうなよ!」


強い口調で言われ、俺はびくっとした。


「裏切らないんだろ?忠誠誓うんだろ?」

翔くんに掴まれてる手首が痛い。


・・・もういやだ。


「翔くんが・・・彼女と何があったなんか知らないよ」

「・・・は?」


「彼女となんかある度にこうやって荒れて俺に当たって・・・」


『ペット』の自分が崩れていく。


「なんでそんなことする彼女といつまでも付き合ってるんだよ。

俺なら・・・俺なら翔くんにそんな思いさせないのに」


翔くんの力が緩んで、俺はその手を振り解いた。


「あんたバカにされてんだよ。なんだよその女。

何人も他の男とヤッて・・・バレたらかわいく泣いて謝って、

そんで戻れるって簡単に思ってんだろそいつは!」


止まらない。

なんで俺がそんな女に負けてるんだよ?

それが、俺が男だからなんて理由なのかよ?



「別れちゃえよそんなクソ女!」


ぱちん。


一瞬何が起こったのかと思った。



「・・・ペットは黙ってろよ・・・」

翔くんを見ると悲しそうに俺を睨んでた。


左のほっぺたが痛み出して、涙がぼろぼろと止まらなかった。


「潤」

「俺にだって感情はあるんだよ!!」


上着を掴むと俺は家を飛び出した。


悔しいよ。


すげぇ、悔しいよ。


もっとうまくやれるはずだったのに。


もっと一緒にいられるはずだったのに。


彼女に負けないくらい、翔くんのこと好きなのに。