「珍しいね。潤の方がうちに来たいなんて」

外で軽くメシ食って、翔の家に着いたのはもう1時過ぎだった。


「明日早いの?」

俺は話をそらした。

「いや、夕方。午前中はジム行こうかと思ってたんだけど」

「そっか」


程よくアルコールは入っているはずなのに、その触れる距離にある翔の体に手が出ない。


「・・・ビール飲む?」

「いや・・・いらない」

「じゃ・・・シャワー浴びる?」


変な間が一瞬あって、翔はあわてて「変な意味じゃねーよ!寝る前の準備だよ!」と言った。


恋人なのにそんな気を遣うのもおかしいよな。

俺は申し訳なくなって目を合わさず微笑んだ。


「・・・なんか最近ごめんな?不安だよな」

翔は何が?と明るく答える。


こんなに俺を好きでいてくれる人がいるのに、俺は最低だ。

いじらしくて、愛おしい。


なのに、キスさえも今は躊躇われる・・・・・・



━─━─━─━─━─


今日も5人でのスタジオ収録だった。


俺は一人になりたくて、トイレの個室でただ携帯を眺めていた。


「・・・ってさ、あなたはっきりしなさいよ」

・・・ニノ?誰かと話しながら入ってきた。

「いやもうほんといいからさ」


この声は―――雅紀だ。



「せっかくちょいちょいJに揺さぶりかけてるのに」


・・・俺の話・・・?


「だからもういいって。前も言ったけど俺翔ちゃんもすきなの。

俺のせいで悲しませたくないよ」


翔のことが・・・好き・・・。


心臓がびくんと跳ねて、ものすごい勢いで全身に血がまわっているはずなのに、

顔も手も、冷たくなっていくのがわかる。


でも待て。

「翔ちゃん『も』」?


俺は立ち上がり、ドアに近づいた。

手を洗う音が聞こえる。


待って。もう少し続きを・・・。


「なんで二人が付き合うって言われたときに、あきらめがつかなかったのかなぁー」

「・・・まぁ恋愛って頭でするもんじゃないですからね」

ドアの開く音が聞こえた。

二人は出て行ってしまう。

「潤くんと顔合わせるかぎり、ずっとすきなままなのかな」


ドアが閉まりかけたとき、確かにそう聞こえた。



雅紀は・・・雅紀は俺のことを―――