天皇賞春で物議を醸した、タイトルホルダーの「歩様が硬い」を解説して見ます。

 

①歩様が硬いとは…??

馬乗りの中でのニュアンス含みの表現なので、人によって差があり、確たる表現でない点に注意が必要ですが、一般的に「筋肉が緊張して、関節の可動が制限されており、歩幅が大きくならない状態」と理解して貰えれば差し支えないと思います。
 
人間で例えて見ましょう。拳を開いて、手首を楽にして、ブラブラして見て下さい。関節はほぼ自由に動きますよね。
では、拳を力強くグーで握って、手首をブラブラしようとしてみて下さい。…全く手首の関節が動かないでしょう?筋肉の緊張により関節がロックされてしまうんですよね。
 
天皇賞春のタイトルホルダーの歩様はこんな具合だったと思ってもらって大きく相違はしていないと思います。
(他にも筋肉痛等で硬さが出る事もありますし、色々バリエーションは有ります)
 

②歩様が硬いとダメなのか

上記でも触れましたが、筋肉が緊張してしまうと関節の可動が制限されてしまうので、ストライドが拡がらず、速く走る事が出来にくくなります。これでは行かんと、横山騎手が返し馬でほぐそうとしていたけど、結局上手く行かなかったという事だと思います。
 
基本的に常歩を長時間を行って少しずつほぐしていくものなので、レースまで時間がない返し馬の段階では中々に難しい事だったと思います。
 

③なぜ、歩様が硬かったのか

追い切り時(写真左)に掛かる気配があったのが遠因だと思っています。
良い時のタイトルホルダー(日経賞時、右)は手綱に遊びがあって、グングン伸びていくのですが、天皇賞春の追い切り時は行きたがる所が出てしまっており、鞍上が背中を後傾させて抑える程、制御がスムーズではありませんでした。
 
 
この抑えていたのがミソで、手綱を強く引いて抑えてしまうと①馬の頭・頸の躍動が制限される上に、②ハミを引っ張り返そうと余計に力んで硬くなってしまう、と言ったデメリットが発生します。
 
②の馬を止めようとして引っ張る→馬がハミを引っ張り返そうとして力んで返して来る→それを更に止めようと余計に強い力で引っ張る→馬が余計力む…という悪循環は、全ての馬乗りが経験した事があるのではと思います。当然、力めば力むほど、先ほどの拳の例え話の通り、どんどん馬の関節が動かなくなってしまいます。
 
①の頭・頸の躍動はどう関係するかというと、馬の体の作り的に「馬の頭が行って返って来て1完歩」なので、頭・頸や柔らかく大きく躍動しないと、ストライドが伸びて来ないんですよね。抑えすぎて頭・頸を小さく制動させてしまうと、歩幅もそれに応じて狭くなってしまいます
 
分かりませんが、3200mのレースだからと追い切りでペースコントロールしようとしたらタイトルホルダーが動きすぎてしまって、それを止めようとケンカになったとか、有り得るのではないでしょうか。
 

④日経賞とどうして様子が違ったか

これも推測の域を出ませんが、日経賞で万全の仕上げで臨んだ事が影響していると思っています。日経賞の追い切りは、僕は100点をつけており、「ここは挑戦者として勝ちに来る仕上げ、その後の反動が出そう」との見解を出しました。
 
反動(これも説明すると難しいのですが、人間で言う徹夜のマージャン後の帰路、みたいな感じで、体に負担が掛かっているにも関わらず、精神的に高揚していてぶっ通しでやり通してしまって終わったころにガクっと来る、みたいな感じです)こそ出なかった様ですが、逆に仕上がり超過になってしまいテンションが上がりすぎてしまった結果、タイトルホルダーが制御に応じない位動いてしまっており、鞍上とケンカするような仕上がり状態になったのかな、と思っています。
 

⑤故障と承知して出走したのか、競走中止と因果関係は

翌、月・火曜日の栗田調教師のコメントから、横山騎手が歩様の変調を気にしていたのは事実の様ですが、それ以上でもそれ以下でも無いと思います。

 

跛行しているかどうかの判断は、前肢の場合、簡素には「痛む方の脚が地面に着いた時に、馬が痛みで頭を上げるかどうか」で判断しますが、そうした挙動が明確に映っている映像は確認出来ませんでした。競走中止~馬運車の乗るまでの映像も確認しましたが、特に痛みを訴える挙動は見て取れず、「最終コーナーで右前脚が少し落ちていた様に見えた」程度です。

 

跛行は程度によって、常歩では普通だけど、速歩・キャンターと強度を上げていくと出現していく場合も結構あるので、ある程度の速度で走らないと歩様の乱れが出ないほど軽微なものだったのかも知れません。

 

ただ、事前に歩様の変調を感じていた中で、4角でも脚の運びがバラっとすると「これはもしかしておかしいのでは…??」と騎乗者心理としては感じやすい場合も多いハズで、間接的には事前に歩様の硬さが見られたから、4角運びが乱れた所で馬を止めるとの決断に至った可能性は結構あるのではと思っています。

 

⑥今後の影響は

これは分からないとしか言いようがありませんが、軽度の跛行で馬のその後の走りに影響が出る可能性は少ないと思います(そもそも痛がっていたかすらも良く分かりません)。
 
人間側としては影響は有ると思います。故障を抱える馬に接する時は、どうしても患肢を気にしがちで、そこに瞬間的な負荷をかけるのを避けて乗る人も多い様に思います。(僕がそうです)
 

⑦最後に

とてもファンの多い、魅力的な走りをする馬ですし、もちろん復活勝利を期待したいです。そもそも大敗からの復活を繰り返している馬だし、僕個人はここで競走中止になったからと言って、今後のタイトルホルダーのパフォーマンスに大きな影響が出るとは思っていません。
 
次が宝塚記念になるのか、天皇賞秋になるのか分かりませんが、引き続き期待を持って応援したいです。