寒空の下深くため息をつく
それは白く染まった。
俺は仕事から家に帰るために
とぼとぼと海沿いを歩いていた。
昼間だというのに太陽は雲に隠れ
少し暗い。
そんな日の海は全然綺麗じゃなくて
暗くて濁っている。
その海を眺めている男の子を見つけ
俺はそのまま踵を返した。
「あれ?翔ちゃん!!何してるの?」
話したくなかったのに、という気持ちが
バレないように笑って振り返った。
「ん?家帰るところ 和くんは?
学校じゃねえの?」
「今日は昼間でだった~」
和くんは喋りながら口の中で何かを
転がしている。
「飴かなんか舐めてんの?」
「ん?ピアス!」
和くんが出した舌の上には
銀色のリングピアスが乗っていて
それは確実に昨日の夜に見た
智くんと同じピアスだった。
「あのね。ピアスが欲しいって言ったら
お父さんがくれたの。だけどねまだ早いって、だから持ってるだけ時々舐めるの」
何かがおかしいことに何故もっと
早く気づかなかったんだろう。
「そう」
とただ呟いて自分を落ち着かせるために
ポケットからタバコを取り出して咥えた
「翔ちゃんはさあ~もし、智くんに
殺されたら嫌?」
「なにそれ 嫌に決まってんじゃん
いくら智くんの事が好きでも
俺の命は俺のもんだろ?違う?」
ふう~ん と和くんは笑いながら呟いて
こちらを向いた。
「違うよ だってね 僕はねぜーんぶ
お父さんのものだから殺されてもいいの」
大きく風が吹いた。
いつか智くんが言っていた
あいつは海から俺の所に戻ってきたんだ
もともと俺のもんなんだ
あれはぜんぶ
どこもかしも
俺のもんだ。
