パナマ文書・パラダイス文書〜非社会的・脱税的生き方を否定する動き | あらやす日(本)誌

パナマ文書・パラダイス文書〜非社会的・脱税的生き方を否定する動き

グローバリゼーションは、

東西冷戦後に崩れた鉄のカーテンをくぐって、

世界各国で東西圏の境目だけでなく多くの国境線を越えて、

急激に蔓延した。

 

新自由主義的な経済思想は、

共産主義の信仰(侵攻)を抑制するために旧・西側圏に浸透し、

国家社会主義的な「大きな政府」を抑制した。

この経済思想で

自由な国際的な経済活動=グローバリゼーションが生まれて、

自由主義的な民間の経済圏を侵攻(信仰)的に拡大した。

そして、

その結果、

国益等の伝統的な社会観を希薄化して、

(新自由主義的経済思想は「小さな政府」を目指して)

脱税的、暴利的な私利私欲も正当化してしまった。

 

資産・所得が巨額な富裕層が持つ「社会」の観念は希薄化して、

無国籍的金融界やタックス・ヘイブンに経済的亡命が行われたことで、

所得分配の制度が崩れて、

社会が崩れて貧民層、移民層は増大した。

そして、

世界で貧富の差が拡大したのだ。

 

 

タックス・ヘイブンは、

グローバリゼーションの合法的聖地だろう。

 

【参考】

・タックス・ヘイヴン(英:tax haven)は、低課税地域、租税回避地のことで、課税が著しく軽減または完全に免除される国や地域のこと。タックス・ヘイヴンに法人登記のある企業・団体やこれらの企業・団体の扱う商品に、課税対象になる所得や既存資産等を移転して、ここで生まれた収益を外国口座管理にすれば課税対象から消える。タックス・ヘイヴンには資産を持つ企業・個人だけでなく、資金管理を行う銀行等の国際金融界も深く広くからんでいるだろう。

・ここ四半世紀で貧富の差がもっとも拡大したのは中国だろう。世界でもっとも中国の貧富の差は大きい(中国国内の大学での統計等)。

 

 

聖地タックス・ヘイブンの実態を書いている、

パナマ文書(2016年)やパラダイス文書(今年)の公表は、

こうした過剰な個人(私欲)主義的、新自由主義的な生き方、

非(「反」もあるだろうが…)社会的で脱税的な生き方を否定して、

正当なモラルを再生させて、

伝統的な道徳観を再生させる動きだろう。

 

【参考】

パラダイス文書で公表された人々の名前は約120人、その約10%、10人以上が日本人。パナマ文書に掲載された日本人は約200人。パナマ文書・パラダイス文書共に掲載された日本人は不明。

 

 

行き過ぎたグローバリゼーションの大きな流れに抵抗する動きは、

伝統的な社会観を再生して、

個人が生きる社会・母国、多くの他者に対して

喪失しつつある普通の意識、社会的貢献の意識を再生してゆくのだろう。

 

【蛇足】

・20世紀中盤に欧米社会(特に英米)で生まれた新自由主義の経済思想は、ドイツのナチ党、旧ソ連等の共産党独裁国に存在する国家の暴走という共通性に注目して強調し、国家社会主義=共産主義を否定した。また、自由市場を重視する新自由主義の経済学派は、国家の経済政策を重視する経済学のケインズ学派とも対立した。

・日本は新自由主義の経済思想を大学教育で導入することをほぼ完全に回避して、新自由主義の関連出版(ハイエク著「隷従への道」翻訳等)もなかば検閲的に抑制した。こうした左傾化容認の動きで、日本は東西冷戦時に東西の中間地帯にできる特殊な平和の衣(反「軍」・反「核」化での中立化)を構築できた(ハードのないこの特殊なソフトな衣は今やアンバランスでなかば無知的で丸裸な感じ…)。

・1990年代以降、冷戦終了後もグローバリゼーションの蔓延を日本は抑制できたが…新自由主義が否定した「大きな政府」=行政権の拡大・肥大は東西冷戦時代の遺産?としていまだに残っている。ここ四半世紀続いている日本の増税推進政策は行政権の拡大・肥大による自己保身的政策そのものだろう。この日本独自的な経済思想が生んだ社会統治体制が、経済成長を抑制(雇用不安定、デフレ・円高、増税による家計支出減少等)して、タックス・ヘイブンへ逃げる経済的亡命者も増加させているのかもしれない…。

 

・日本では、グローバリゼーションの最大の武器である「金」=外国資本の参入の頃からバブルが起き、バブル崩壊が起きた。ここ四半世紀で(1980年代から)、日本の株式関連市場で外国資本の売買額が急増して6割以上になり(昔は3割くらいか?)、こうした自由市場での外国資本の参入(過剰な「経済の自由」の行使)がこれ以上増加したら経済支配される国になる。日本では先進諸国でもっとも国内個人投資家の少ないので(株式持ち合い=企業間で株式所有を否定して企業の株式売却がなかば強制されて)外国資本による株式市場の参入は急激に進んだのだろう。日本銀行による「円」の公的資金による外資抑制はかけているようだが、日本独自の民間資本の再生が必須課題だろう。

・今でもアメリカなどの多くの国では中央銀行的機関もグローバリゼーションにのみ込まれている。アメリカなどでは自国通貨の発行権を国・政府が統治支配していない。公私ともにグローバリゼーションに巻き込まれると、目に見えにくい経済面の恐怖政治になりかねない。

 

・アメリカの通貨ドル発行権はFRB(連邦準備制度理事会)にあり、アメリカの政府(財務省)に通貨発行を委託管理させている。すなわち、アメリカは為替等にかかわる金融政策を民主主義的な実行ができない。裏のアメリカ政治史では、リンカーン大統領、ケネディ大統領(レーガン大統領、ニクソン大統領も?)はFRBを解体して大統領統治下に置くことを考えていたと思われる仮説・言説が出ている。リンカーン大統領は「人民の、人民による、人民のための政治」と有名な演説をしたが、アメリカのドルは今でも「人民」ではなくFRB(実態は…国際金融業界?)に支配されている。

・円の通貨発行権を持つ日本銀行は株式会社で、この株式の過半数は政府が所有(日銀法で政府所有率を義務化)しているが、完全に日本銀行を独立させた場合(自由に株式が誰でも持てる場合)、アメリカのFRBのような存在になってしまう。