荒尾市立図書館 郷土資料再発見の旅(第25回) 
『会誌 いろいろ』

荒尾市立図書館で働く増永荒雄と申します。荒尾市在住歴40年の私が、当館が所蔵する郷土資料とその魅力を綴らせていただいています。

図書館HP↓
荒尾市立図書館 (arao-lib.jp)

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「貴重な資料」「希少本」についてはそれぞれの図書館、いえ、個々に定義があるかと思います。


先日も小学生から「頭がよくなる本を教えてください」と聞かれました。

頭がよくなるほん・・・。(難題)

頭がよいとはどういうことか?ということから考えていかなければ・・・とも思うのですが。
とにかく、本を読むと…しなくていい失敗とか、他人の気持ちが少しわかるとか、カンタンに疑似・仮想体験ができたりとか、想像力が育まれる、忍耐力がつく…など良いことがたくさんあるような気がします。(あと、大人の方がスマホではなくて本を読んでいると「カッコイイ!」と思われそうなこの時代。新しい‟モテ”のアイテムとしても…)


しかし、当たりはずれもありますから、良い本(自分にとっての)と出会うには、数をこなしていくか、効率重視の方は本好きの方から紹介してもらうとか、いわゆる「おすすめの本」を紹介している本があるのでそれを参考にするという方法もありますね。

そう、貴重な資料、のことです。
荒尾市立図書館には和漢籍・古文書類は一切ありません、といつかの記事でお伝えしましたが、
地元の会の会誌、といいますか記念誌、というか本の流通ルートには絶対に乗っていない本(冊子)はございます。

 



ある会やグループが発足し、その報告なり活動記録なりを記した本。
創刊号には特にその会の基本理念といいますか、思いが記されていてとても重みがあります。
メンバーやその会のありようは年月とともに変遷していくものですが、最初の軸が文字となって存在していて、それを後年の私たちが垣間見ることができるのがとても有難いことだと感じます。


いや、むしろ、この会に関わる方は必ず目を通してほしい。
とにかく熱が伝わってきます。
創刊号の持つ力を(目次だけでもいいですから)刮目し、とくとご覧いただきたい。中年の主張!


今回は荒尾市立図書館が関わるそんな会の「会報」3点をご紹介します。



こちら。

オレンジの表紙。こちらは
「朗読サークル あらお」さんの会誌です。(1900年(平成2年)発行)

読めますか?
わたくし、増永は恥ずかしながら読めませんでした。
しかし、この冊子にはいつも目を通しています。

1984年から現在まで長きにわたり続いている会で、「一号」には現役の方も名を連ねています。
会のなりたちや会員それぞれの方のボランティア活動のきっかけ、さらには図書館への要望なども書かれています。

 

「・・・私たちのサークルは、1984年の発足以来活動の部屋を、録音室をとお願いしているのが実現のきざしさへない。・・・」

(「市立図書館に障害者のコーナーを」より)

す、すみません。。。

 

長らく荒尾市立図書館の録音図書をボランティアで作っていただいている朗読サークルあらおさんです。

本当に本当に感謝のひとことにつきます。ありがたいことです。



次はこちら、黄色の表紙です。

読めますか?(再)

荒尾市の方は・・・難読漢字を使われるのが好きなのでしょうか。


(荒尾市立図書館は荒尾市中央公民館と同じ建物ですので(注:2022年3月現在)、図書館と公民館利用者が相互に施設を利用されています。

会員の方の姿もよく図書館でお見かけします)

公民館擁する生涯学習の会、「万年青大学」。この会の会誌です。

 

万年青大学とは…

昭和51年5月、荒尾市教育委員会の提唱のもと、高齢者教室として発足したのちに、平成2年に万年青大学と名称が変更され、現在に至っております。平成22年で、開設35周年を迎え、その間、受講されました方は、6,179名になります。

 万年青(おもと)とは、古典園芸植物の名であり、常緑の多年生草本でその栽培の歴史は、三百数十年とも、四百年以上とも言われ古くは徳川家康が、江戸城へ入る時、家臣の中に万年青を献上したものがいるとも伝えられています。

 一年中、青々とした葉をたたえる万年青、いつまでも若々しく生涯を通しての学習活動を目指しています。

 受講生の基準は、荒尾市内に住居又は近郊市町に住居があり、55歳以上となられる方で、自身の健康管理ができ、学習意欲を持ち続けて、人の和を大切にされる方ならどなたでも参加していただく事が出来ます。

講座の一例としまして、その時々の時事、医療・健康問題・環境問題・市政・福祉および介護・男女共同参画社会・金融と消費・文学と音楽・思いやりの心・そして、郊外への史跡探訪など取り上げた、講話内容を組み立て 、毎年度6月の開講式から始まり月に一度の教室の他に、受講生で運営する、「自主グループ」も盛んに活動を展開しています。関係者皆さまに支えられながら、新しい歴史を一歩、一歩と刻み続ける「万年青大学」

あなたも仲間になって、生涯を通しての学習活動を体験してみて下さい。

(荒尾市中央公民館のホームページより)


さて、創刊号を開いてみますと「学習目標」は「高齢者として社会生活、家庭生活のなかで果たす役割を自覚し、若返りの泉をモットーに幸せの輪を広げて行きましょう。」と書かれてあります。
名称はもともと 荒尾高齢者教室 だったようです。
どうもこの会誌のタイトルをそのままとって改称したようですね。
企業や神社の名前が市町村名になってしまったみたいな・・・(ちょっと違いますか)

 



こちらもこの会に入ったきっかけや、ここで学んだことを会員の方がそれぞれ記しているのですが、それだけではなく、人生で九死に一生を得た恐ろしいエピソードや、幸徳秋水事件の関係者と交流があった話などなんでもありな内容がまとめられています。


さすが人生の先輩といいますか、文章も簡潔で流暢です。また、とり上げる内容も面白い。文集になぜこれを記そうと思われたのか…?
万年青創刊号発行から44年。最新号もなんとなくテイストはほぼ同じですのでこれもすごいことだな、と思います。


最後にご紹介するのはこちらです。
『野原の庄』

1978(昭和52)年度発行の冊子です。
「郷土の歴史講座運営委員会」が編集。

当時の荒尾市中央公民館長が序文を書いていますので、こちらで行われていた歴史講座のようです。会員なんと72名。

 

(↑目次)


読んでみますと「赤田池と安慶」「平山天満宮」というような歴史探訪の話はもちろんですが、子どもの頃、自宅付近でおきた暴動のことを書いている方もいます。あれ、万年青の文集とかぶっているような…

しかし一見、個人的な・・・と思われる思い出の記も、このように40年以上も過ぎれば「歴史」となるものですね。実際なっていますものね。

石塔や寺院、古文書も歴史資料には間違いないのですが、こういう市井の方々のリアルな思い出もやはり文化・民俗史的に貴重であるなということを感じます。


そういう意味でもこの三冊は当館が所蔵するさまざまな会誌の中でも特におすすめの郷土資料です。

わたくし増永は「希少本」と思っています。




たいらぎ』1~31号 (A369.7-タイ) 朗読サークルあらお/編
『万年青(おもと)』1~42号 (A379-あら) 荒尾市高齢者教室/編*抜けあり
『野原の庄』創刊号~6号 (A219-きよ)郷土の歴史講座運営委員/編

 

 

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2022年4月、荒尾市立図書館はお引越しをいたします。

それに伴い・・・あ、いえいえ、まったくの偶然ですが来年度よりわたくし増永も家庭の事情にて改姓することになりました。

あらためまして、緑ヶ丘荒雄と申します。

とりいそぎご報告まで。今年度1年間、おつきあいありがとうございました!