「これ、脳梗塞やろ?」と、母が聞く。

いつまでも、調子が戻らない自分の体がヘンだなと、
感じているのだと思う。

「全然、治らへんなあ。思ったように、動けへんで、みんなに迷惑かけてまうなあ」

母には、脳腫瘍のことは伝えてあるが、
理解できていない。
治らない病気だとは、知らないし、
余命のことは伝えていない。

「姉ちゃんも、脳梗塞、気をつけなあかんよ。
おばあさんも、脳梗塞やったで。」
と言う。
母の母も、脳梗塞で亡くなっているので、
私のことを心配してくれるのだ。

「脳梗塞は、薬で治ったよ。いまは、脳腫瘍やで、
手術して、薬のんどるんだがね」と話すのだが、
「手術したっけ?いつした?」と。

手術したことは、忘れてもいいよ。

いまは、今日が、調子のいい日になることだけ
考えよう。


「全然、治らへんなあ」

治らへん。
その言葉が、いま、いちばん、キツい。