有期労働契約には、契約期間の上限が定められていて、平成16年1月の労働基準法の改正で1年であったものが現状の3年に変更されました。労働契約や労働時間に係る制度について、多様な働き方に応じた実効あるものとするための見直しとのことであるが、このとき、次のような労働基準法第百三十七条も定められています。
第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
そしてこのとき作成された厚生労働省の資料には
この措置は、政府が、改正労働基準法の施行後3年を経過した後に、その 施行の状況を勘案しつつ検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずる までの間の暫定措置です。
と書かれています。こんな法律作っちゃったけど、その結果どうなるかわからないので3年たったら見直しましょうということです。
では、有期労働契約の契約期間の上限が定められているのはどういう理由によるものでしょうか。このことについて、大内伸哉さんの「雇用改革の真実」で次のように述べられています。
- 雇用改革の真実 (日経プレミアシリーズ)/日本経済新聞出版社
- ¥918
- Amazon.co.jp
有期労働契約は「1つの契約の期間」の途中では「やむを得ない事由」がなければ打ち切ることができない。このことは、その期間、当事者は契約に縛り付けられることを意味し、労働者にとってみれば、強制的な労働につながるおそれがある。
実際、歴史的には、そのおそれが現実化していた。労働基準法が制定されるまでは、5年契約まで許されていた(民法626条)が、労働者が5年の契約期間の途中で過酷な労働から逃げ出したくなっても、「やむを得ない事由」があるとして契約を打ち切ることはなかなか認められなかった。
こうした強制的な労働が人権侵害を生み出したことから、労働基準法は、労働者の保護のため、労働契約の期間の上限を1年と定めた(14条)。
今の日本国憲法で職業選択の自由が認められるようになったことを考えると、この上限は過去の悲しい歴史の反省の意図が込められているとみるべきではないかと思います。しかし、この法律からすると、やはり1年以下の有期労働契約では労働者が退職するのはまかりならないというのが原則と読めてしまいます。