君への贈り物 16   Switch ~君を守りたい~ 2nd シーズン | a guardian angel

a guardian angel

スキビ好きな私が無謀にも始めてしまった…

二次創作・ネタバレ・つぶやきを含む妄想ブログです。

当然のことながら、作者さま・出版社さま等とは一切無関係です。

Side 蓮


仕事を終えて家に戻ってくると…キョーコが夕飯を作っていた。

その何気ない日常になんだか安堵する。


昨日のキョーコからの電話…

クリスマスが彼女の誕生日だと知っていて…

次から次へと…先回りして彼女との距離を詰めてくるその男に

蓋をしたはずの黒い感情が呼び覚まされる。

彼女が…アイツに揺れるなんてことはありえない。

そうは思っていても、俺の秘密を掴んでおきながら…

それに触れてこないアイツの行動が…不安を煽る。

流れ出したCMの…あの表情が…素人の演技?

それに…彼女のあの表情を正面から見ていて

魅せられない男なんていない…。

彼は…確実にキョーコに囚われていく…俺と同じように。

最初にあった余裕さえも…彼女に溺れていくうちに無くなってしまうんだ。

その怖さは誰よりも身に染みてわかってる。

だからこそ…不安なんだ。

彼が…彼女に堕ちていくのがわかるから。


彼女がいない未来なんて考えられない。膨らんでいく独占欲に支配されないように…

彼女のことを一番に考えられる自分でありたいと…言い聞かせて理性を保つ。

昨日は…あれ以上冷静でいられる自信がなかったからと…切ってしまった電話。


そんなことを思いながら…部屋に踏み出した瞬間…視界に入ったキョーコの大きな鞄。

なんだか…嫌な予感がする。

ドアのところで立ち止っていた俺に気付いたキョーコが声をかけてきた。

「おかえりなさい。クオン」

その顔はいつも通りのキョーコで…

「ご飯できてるから…温かいうちに一緒に食べましょ?」

テーブルに並べられていく食事よりも…気になったその鞄の意味を聞く。

「アレは…何?」

鞄に視線を送りキョーコの顔を見た。すると…にこっと微笑んで…

「後で説明するから…まずは食事ね!」

有無を言わせず席に座らされる…。

とりあえずは…と食事を済ませると手早く後片付けを始めた彼女。

それを一緒に手伝いながら…食後のコーヒーを用意しようとすると…

「今日は紅茶にしましょう?美味しい紅茶を頂いたの。」

「いいよ?それじゃ…紅茶にしよう。」

キョーコが入れる紅茶の銘柄を眺めていると…

その缶には、MARIAGE FRERES -マリアージュ フレール- 

フランスの老舗か…確かに美味しいと評判を聞いたことがある…

…MARIAGE マリアージュ…

って確か今回のCMの…

頂きものっていってたけど…これってひょっとして…

「…誰から?」

思わず声がワントーン下がっていく。

「今日ね、頂いた紅茶が美味しかったから…銘柄を聞いたらくれたの。」

…ってことは彼から?悪びれず云う彼女に少し苛立ちを覚える…。

「いらない。」

「…本当に美味しいのよ?」

「彼から…なんだろう?」

「…そうよ?でも、これは迷惑料みたいなものだからいいの!」

迷惑料…って

…らしくもないキョーコの言い回しにその顔を覗き込む。

すると…思ってもみなかった言葉が返ってきた。

「あのね…私、彼と勝負することになったの。」

「?!」

勝負?!勝負事に目のないキョーコはその目を輝かせてる。

一体…どういうことだ?橘氏と勝負って…

「だから、クリスマスまでの間…ここを出なきゃいけないんだけど…

いくつか作り置き出来るものは冷蔵庫に準備したから…ちゃんと食べてね。

ちょっと目を離すと…すぐ食事を抜くんだから…それだけが心配。」

クリスマスまで…って 食事の心配なんてどうでもいい!!

家を出るってどういうことなんだ?!

あの鞄は…

「…どういうことなのか…説明してくれる?」

困惑を隠せない俺に笑顔の彼女…ソファに座って事の経緯を彼女から聞かされても納得できない。

彼女は…俺の秘密を守るって…いきまいていて…

俺の機嫌が悪くなっていってることにも気づかない…フリをする。


俺とキョーコを引き離して…

君に迫るって公言している男のところに…

俺が君を差し出すとでも?

手を出さないなんて…そんな口約束が信じられるわけない。

俺でさえ…君を前にして抑えられなかったのに…


「まかせてね!!クオンの秘密は私が守るから!!」

「任せられない!俺の秘密なんてどうだっていい。

君を危険にさらすよりよっぽどいい。」

そう云い放った俺に、彼女が鋭い目で抗議する…

「ダメよ!!

もうすぐ…あなたの目標が叶うのよ?

それに…心配はいらないわ。

条件をつけさせてもらったから…」

そういうと彼女はやんわりと微笑んだ。

「?!」

「だって…さすがの私でも…彼の用意した家に何も考えず行くはずがないでしょ?

だからね、モー子さんちの隣に借りてもらうことにしたの。

それだったら、社さんだって…ね?一石二鳥でしょ?」

琴南さん…か。

社さんと付き合いだしてからは…もうそろそろ半年…か。

確か…今は…半同棲に近い生活を送ってるんだったよな。

確かに…彼女の家の隣なら心配はいらないかもな…。

「彼は…私とクオンの絆を証明しろって云ったのよ?

1ヶ月くらい…会えなくったって…大丈夫よ。

だって、1ヶ月で根を上げてたら…

4月からなんて…」

そう云って…彼女は俯いてしまった。

去年の夏…オファーを受けたハリウッド映画『Spy Sweeper』は、脚本やセットの準備が遅れていて…撮影は4月からの予定になってる。

彼女が高校を卒業したら…結婚する予定だが、その後は東京とアメリカ…遠距離での別居生活が待っている。

確かに…今までだって仕事で数週間会えないことはざらにあった。

だけど…

「それに…嘘をついてるようには見えなかったの。

だって…最初から知っていて何もしてこなかったわけだし…お金は余りあるほど持ってる人だしね。

ただ…こんなに簡単にばれちゃうなんて…そっちの方が不安だわ。」

「…簡単じゃない…社長が圧力をかけていたんだ…

海外までは手を回してなかったけど…。今回のことはいい教訓になったよ。」

もう…同じ手は食わない。だけど…

「?!…クオンも知ってたの?」

「彼が…俺の秘密を知ってるって…気づいたきっかけは碧子さんだ。」

「そうだったの…やっぱり…侮れない人ね

でも…なんか…

そんなところも似てる気がする。」

「え?」

「なんかね…イメージっていうか…お母様の影響もあるのかもしれないけど…

クォーターで、イケメンで、何でもできて…普段は笑顔のポーカーフェイスで、

仕事にはストイック…でクールな一面があって…腹黒い?」

「腹黒いって…俺はそんなこと…」

「ないなんて言わせないわっ!!

うふふっ

…でも、あなたにはあって…彼にはないものがあるみたい…」

「俺にあって…彼にないもの?」

「そう!それが何か…彼はまだ気づいてない…

とにかく、もう少し詳しく調べてみて私も対策練らなくっちゃ!」

「…なんだか…楽しんでない…?」

人の気も知らないで…

「だって…負けない自信あるから!」

それは…彼に揺れたりしないっていう彼女の強い気持ち…

「…でも、俺は面白くない…キョーコと1ヶ月も会えないなんて…

それに…彼がキョーコを口説くことに変わりないじゃないか。」

…彼が何を仕掛けてくるのかわからない…

まだ何かが起きるような気がする…。

そんな不安を抱えながらも…彼女を説得するのは諦めた。

「…ミッションだと思って?

とにかく!私がクオンを守ってみせるから。」


ミッション…ね。

一度言い出したら聞かないからな…

だったら…と俺は…明日のオフを知らされていないキョーコに

碧子さんが準備してくれた裏ミッションを遂行させてもらうことにした。

会えない1ヶ月分の彼女を十分に堪能させてもらわなきゃな…。

時間はたっぷりとあるし…

強気な彼女も嫌いじゃないけど…さっきのセリフのお仕置きも兼ねて…ね。

その身体にたっぷりと俺を刻みつけてあげる…

会えなくても平気…なんて…その口から…もう言わせたりしないから…。


それに…会えない…といっても、家で会えないだけで…会う機会はいくらでも作れる…わけだしね?

社さんには…例の雑誌の件のマスコミ対策として…ということで周囲にマークの目を強めてもらうことにしよう。


クリスマスの件も…母からの情報をもとに段取りはついている。

キョーコとの絆…ね。

彼に負けるわけにはいかないから…

俺たちに勝負を挑んだこと…後悔してもらおうか。


→ 17話へ