静かに走る25:30のタクシー
港区海岸のスチールビルドBARでグラスビールとブルーチーズピザを
遅い夕食として迎え、店の外に広がる夜のマリーナを好きなだけ眺めていた。
今夜、店内のBGMはQUITESTORMで統一されており、身も心もマリーナの
揺れる水面にすっかり溶けてしまっていた。
あんまり気持ちがいいものだからついウエイトレスの女の子に話し掛けては
この店が好きでとても楽しんでいる事を不器用に感謝をこめながら伝えたの
だった。
「1時か...」
BARは2:30までだが、寒い中を帰るには勇気のあるうちがいい頃合いだ。
夏であれば歩いて遊びながら帰るところだが、自然とタクシーリザーブを
入れて呼ばれるまで溶けた身体を再生していた。
そして、まもなくタクシーが来た
「さぶっ、」
店の扉を開け螺旋階段を降り、そのままタイミング良く開いたタクシーのドア
に身体を放り込んだ。
ドアが閉まり、暖かで静かな車内を感じ再び心地よく溶けていくようである
車内には小さくSWINGが漂い、眠気と交わり自然と目蓋が閉じていった。
増上寺の交差点を過ぎ、白金台の自宅へ向かう道のりはまるで都会の
オペレーシングスイッチを全てOFFにしてしまったかのように静寂だった。
私は心の中で部屋からこの静寂の都会を肴に薄い水割りを楽しもうと
シートで舟を漕ぎながら想うのであった
夕方のカフェスタンド
久しぶりの連休を目の前にはしゃいでいた...
夕方、会社がある30階の窓より射し込む夕日が少々興奮気味な
私の火照った顔を更に熱くした
少人数のオフィスだからみんな私のうれしそうな顔を見ては
元気な子供を見るような感じで、軽く笑っていた。
あんまりうれしそうなのも恥ずかしいので
1階にある、カフェスタンドで連休の予定を立てることにした
ブレンドのブラックに、プチガトーを2種類頼んで
竹林の中庭が見える涼しげな席に座った
仕事の予定やビジョンがびっしりと書いただけの手帳は
私よりも働き者で、連休の予定を書き込もうとしたが
今回は手帳にも休んでもらおうと、何も書かないことにした
そして、いつも自分を支えてくれている物にすら感謝が
必要なのだと自ら納得していた。
しばらく、コーヒーと小さなケーキを少しずつ楽しんでいると
隣のテーブルに1人の女性が軽い会釈をしてトレーと共に着席した
私も同様に先客のいる場所での軽い会釈は素敵なマナーだと思う
そんな素敵な隣のテーブルの女性は、毎朝同じ時間帯のエレベ
ーターでよく同乗する1人だったりした
「あの、朝よくエレベーターで一緒に...」
私の言いかけた途中で彼女もすぐ話したそうに
「そうですよね、30階の方ですよね!」
急いで私の声よりも弾んだ感じだった
この後、軽いプロフィールを交換した。
そして今度会ったら挨拶が出来るという想像が
コーヒーの香りと共に暮れかけの空を少し延長させた
1時間以上早く着いた空港では、カフェLoungeが優雅にお楽しみ頂けます
モノレールの改札を潜り、 NEWターミナルへ向かう長く伸びたエスカレータの
上で時計を確認した。ゲートオープンまで一時間半の余裕がある、私はエス
カレーターを降りるなりモーニングを楽しめるシャレたカフェを探した。
「カスタードイエローの座り心地の良さそうなソファー」「ロングエプロンのギャ
ルソン」「BGMはスムーズジャズ」...
『よし、ここにしてみよう』
私は軽い身支度を詰めた鞄と共に店内へと進んだ、姿勢のしゃんとしたギャ
ルソンが期待通りシンプルに私をテーブルに案内したメニューを開くと目に
留まるのはカボチャのゴールドカラーのスープだった。そして迷うこともなく
そのゴールドカラーのスープを注文した。
こういう、カフェやレストランでは、注文してから先の「待つ」という時間が私に
はありがたく感じる。恋人同士なら話をしたり、壁の絵を眺めたり、向こう側の
テーブルの客を観察したり...
この空間の中で楽しむには十分な時間なのである。

