*1

 

前回、世界は地球規模の危機に突入すること見ました。

今回、かつての危機は突然、それとも起こるべくして起こったのかを振り返ります。

歴史が私達に心構えを示してくれるでしょう。

 

 

結論から言うと、危機を招く下地が国や社会にあって、何らかの切っ掛けによって一気に破局に向かうと言える。

 

 

* 古代ギリシャはなぜ滅びたのか?

 

ギリシャ諸国はアレクサンダー大王の一撃で軍門に下り、歴史の表舞台から消えてしまった。

 

しかし遡ること150年前、大国ペルシアすら撃退していた。

古代ギリシャは千を越える都市国家の集合体で、この大勝利後、内部抗争を繰り返し、ほぼ毎年どこかで戦争をしていた。

この戦争は過酷さと残虐さを増していき、衰退を招いた。

致命的なのは、ついぞ大連合が叶わなかったことです。

 

もう既に外部からの侵攻になす術はなかった。

 

 

* 西ローマ帝国と中国の宋王朝はなぜ滅びたのか?

 

共に軽蔑していた異民族の侵攻によって崩れ去った。

 

この東西を代表する両大帝国は、かつて素晴らしい芸術や制度を生み出し、政治・経済・文化で他を圧倒していた。

ローマは巨大軍事国家であり、宋は優れた官僚国家でした。

 

両帝国は豊かにはなっていたが、富と権力は一部の層に握られ、政治経済は彼らの特権維持に費やされた(腐敗)。

こうしてローマは軍隊を傭兵に、宋は異民族に貢納することで平和をかろうじて維持していた。

 

もう既に自力で異民族に対抗する力はなかった。

こうして帝国は共に2百年ほどで盛衰を終えた。

 

 

* 三つの文明の衰退に共通することは?

 

民衆が意気軒昂で大きな力を発揮出来た時代は、文明や帝国を築くことになった。

しかしやがて中枢、経済と政治を握る層が腐敗し怠惰になると、自らの保身には躍起にはなるが、国や民衆を守る事を放棄するようになる。

(宋では、有力士大夫が自身の資産保全と引き換えに異民族に寝返った)

分断や内部抗争が頻発するのも同じ理由からです。

 

それでは身近な危機について見ます。

 

 

< 2.福島原発事故を描いた映画 >

映画「フクシマフィフティ」は原発の現場を活写し、「太陽の蓋」は混乱の全体像を描いている。)

 

 

* 福島原発事故は天災か?

 

大地震が予兆も無く突然襲い、大きな津波が大災害をもたらした。

 

しかし各地の港には古くからの津波の伝聞(石柱碑)が残っている。

まして原発事故は、以前から一部の研究者らによって大津波や電源喪失の可能性が指摘されていたが、電力会社側と政府によって握り潰され、対策は講じられなかった。

 

注意すべきは、当時の内閣や原発オペレーターの奮闘だけでは大事故が防げなかった事です。

結局、原子炉格納容器に偶然に穴が開き圧力が低下し、大爆発が起こらなかったからこそ半径200kmを越える大災害にならなかった(映画「フクシマフィフティ」でも一言セリフがあった)。

 

 

< 3.日本列島は巨大地震地帯 >

 

つまり事前の対策、むしろ原発不採用こそが必要です。

10年経った今でも多くの避難者を出している原発事故は、多くが手抜きによる人災と言えます。

 

 

 

< 4.アジアのコロナ感染者数 >

緑線が日本でインドに次いで2位(縦線目盛りは対数)

 

 

* 日本のコロナ禍は天災か?

 

コロナウイルスがなければこんなことにはならなかった。

 

しかし以前から疫学者は地球温暖化とグローバル化で巨大なパンデミックが人類を脅かすだろうと指摘していた。

 

一方、同じような発症率が予想される東アジア諸国に比べ、日本は人的・経済的な被害が大き過ぎる。

感染が確認されてからの医療体制の拡充、マスク手配、PCR検査拡大、ワクチン接種など、あらゆる政府の対応が他国より遅れに遅れている。

しかもオリンピックを控えて、他国より適切な対処が必要にも関わらず首脳は精神論を唱えるばかり。

 

 

< 5. 日本のコロナワクチン接種の遅れ >

1月14日時点で米国は1千万回、日本は3月26日で80万回、しかも停滞している。

 

結局、政府と官僚の日頃からの危機管理能力低下が災いを大きくしている。

 

 

* 1980年後半、日本は久々の好景気到来と浮かれていたが

 

当時余裕のある人で、これはやがて崩壊するかもしれないと用心し投機や浪費に走らなかった人は稀だったろう。

 

しかしバブルは弾け、周囲で羽振りの良かった人が株や土地転がしで大損し、ついには夜逃げする人も出た(半年ほどで数百兆円が消えた)。

バブルは麻薬と一緒で、人類は中毒症状(金融危機)を恐れながらも麻薬(バブル)を手放せないでいる。

なにせ著名なFRB議長すらバブルの火消し時期を見誤り続けている。

バブル崩壊の甚大な被害と、これを生み出しているのが金融・経済政策だと言うことは既に明白です。

 

つまり、これは人類が自ら生み出し、自らを害する典型的な現代危機の代表です。

 

 

* 原発事故、コロナ禍、金融危機に共通することは?

 

前の二つは、天災を切っ掛けにして怠惰な政治が災いを大きくしているケースです。

他国にも同じ状況があるにも関わらず、日本だけが酷い結果を招くのですから明白です。

(原発は世界にありますが、これだけ地震や津波に襲われる所はない)

 

バブルと金融危機は、正に人間社会が作り出した災厄です。

 

つまり、どれも私達、政府のあり方で危機の発生と回避が決まるのです。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1

 

これまで、世界が1980年代に道を誤った事、

お粗末な日本政府がさらに悪化させて来た事を見ました。

この先世界がどうなるかを考えます。

 

 

* 80年代に始まった転換策は次の四つに尽きる

 

A. 労働者の賃金を下げる

B. 市場を自由競争に任せる(放任)

C. 通貨発行減でインフレを終わらせる

D. グローバル化を進める

 

上記の政策で功を奏したのは、Ⅽのインフレを撃退した事、Dの世界貿易額が増大したことです。

AとBについては、フランス、ドイツと北欧などは抑制気味か別の道を選んだが、グローバル化には勝てず、苦戦を強いられている(スウェーデン)。

他の先進国ではAはほぼ完璧に、Bは恣意的に実施している。

 

 

* やがて災厄が先進国を覆うようになった

 

E. 経済成長率が低下した

F. 国内の格差が拡大した

G. 累積財政赤字が増大した

H. 金融危機が繰り返し巨大化した

I. 多国籍企業や巨大資本が世界を翻弄している

J. 莫大な資金を持つ超富裕者層が、国や世界を動かしつつある

 

これらは80年代の経済政策の帰結ですが、他にも深刻になりつつある問題があります。

 

K. 世界各地で紛争が絶えず、難民が増大し、人種や民族間の差別・分断が深まり、地球温暖化が厳しさを増し、地球資源の枯渇が迫っている。

 

 

ここで疑念を持つ人もいるでしょう。

世界は良くなっているはずだと!(特に金融業界で生きる人)

 

結論から言えば、発展途上国は概ね経済を向上させ、生活水準や衛生状態、政治も良くなっている。

だが世界的な危機が起これば、ひとたまりもない。

 

 

 

< 2. 1988〜2008年間での実質所得の伸び >

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd122130.html

このグラフから広範囲に発展途上国の所得が向上している一方で、先進国内で所得格差が拡大したことがわかる。

 

一つの誤解は「ファクトフルネス」です。

 

この本は、世界や社会を悲観的に見過ぎていることに警鐘を鳴らし、現実のデーターを見せて、その誤りを指摘しています。

この本は重要で、発展途上国自身の努力と相俟って、グローバル化に伴う経済発展と、人々が世界に関心を高めた結果として国際機関の援助や監視が功を奏したことを読者は実感できるでしょう。

 

指摘していることは正しいのですが、残念ながら一部しか見ていません。

著者は、「国境なき医師団」等の医師として世界の発展途上国を巡り活躍されていたので、関心が発展途上国に限定されており、地球規模の将来への視点(危険予知)が乏しい。

従って、現在起きているパンデミックや地球温暖化の影響、先進国内の分断や民族対立、経済問題については完全に欠落しています。

(著者に悪意はないが、政府に忖度し政府の悪い情報を隠蔽している日本のマスコミと一緒になってしまった)

 

思い出して欲しい、19世紀末から世界が巨大な侵略と戦争に巻き込まれたが、これを始めたのは当時の大国でした。

つまり、今、軋み始めている先進国こそが危機の元凶になる可能性がある。

 

残念ながら、この本はこの視点が欠如している。

 

 

* それでは将来どうなるのか?

 

前述のE〜J項がより悪化し、最悪の事態の引き金になるでしょう。

 

L. 経済成長しても、大多数の国民の所得は下落する。

M. 格差が昂進し分断が進み、超富裕層(資金)は国境を越える。

N. いずれかの国が財政破綻かハイパーインフレを起こし、世界に伝播するだろう。(以前は、国民を困窮させる超緊縮財政、経済を破壊するハイパーインフレを起こす財政破綻が起こると言われていたが、MMT理論は条件付きでこれを否定している。しかし一ヵ国でも起きると・・・)

O. 金融危機が巨大化し、最後には経済が破綻し、大戦の引き金になるかもしれない(歴史は繰り返す)。

P. 巨大化する資金が世界を混乱させ、益々一部の人々が政治・経済を牛耳ることになるだろう。

 

 

*3

 

 

* 実は、問題はこれからです。

 

上記のL〜P項が進むと、前述のK項(地球温暖化、地球資源枯渇など)との関連で世界は一気に破局へと向かうでしょう。

 

その最大の理由は国内の分断と多国間の対立が激しくなるからです。

経済破壊と格差拡大、民族差別感情の高まりは、ヒトラーやトランプのように国民の暴発を誘発するでしょう。

さらに、一部の超富裕層に政治と経済を握られると政治は国民から奪われてしまう。

 

そうなると世界的な危機である、パンデミック、地球温暖化(炭素税施行など)、資源戦争への協同対処が困難になる。

またグローバル化した自由主義経済の問題点(タックスヘイブンへの課税、国を越えた金融課税、各国の法人税減税と賃金削減競争など)を解決するには世界が一致して協力することが必要なのですが、不可能になるでしょう。

 

こうなると、行き着く先は地獄でしかない。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

*1

 

前回、ふるさと納税が消費を減少させていることを確認しました。

ところが実害はさらに深刻です。

問題点を洗い出します。

 

 

< 図2.ふるさと納税寄付者の利得  >

 

図の説明

前回検討した金の出入りを、一人の寄付者で確認します。

 

寄付者は手数料2千円を支払い、ふるさと納税を申告すると、特例により納税すべき20万円をまったく納める必要が無くる(減税)。

さらに寄付先の自治体から市場価格で16万円(80%)の返礼品、多くは食品が届きます(限度30%だが還元率は遥かに高い)。

すると寄付者の世帯は、生活費(食費)を8万円(50%)節約するでしょう。

また減税20万円の内、予定外の購入に平均5万円(25%)使い、残り15万は預金(投資)などに充てるでしょう。

 

 

 

< 図3. 減税と納税の関係 >

 

図の説明

今度は全体像を掴むために、500人の寄付者で確認します。

ふるさと納税が行われると、寄付総額1億円を別の国民の納税1億円で補わなければなりません。

赤字国債発行でも良いが、本質は誰かが補わないと税収不足になるからです。

(税収1億円の国で1億円減税出来るだろうか?)

 

 

< 図4. ふるさと納税前後の全体の消費 >

 

図の説明

上図は通常の納税で、下図はふるさと納税後です。

通常、寄付予定者5百人は1億円、他の国民も1億円を納税し、計2億円が国民に直接サービスされていた(後で減税を考慮する為)。

 

ふるさと納税になると

国民へのサービス(消費)は都市から地方に移り、2億円が7千万円に減ります。

地方の返礼品業者は3千万円の売上(消費)を増やします。

寄付者は、2千5百万円を新たに消費し、4千万円を返礼品で消費を減らします。

すると都市部の返礼品(代替え)売上が4千万円減り、全国で合計1千万円減ることになる(図中の注意1)。

 

結局、合計消費は2億円から8千5百万円(7+3+2.5-4=8.5)に減った。

しかも、国民への直接サービスは1億3千万円も減った。

 

 

< 図5.ふるさと納税前後の全体の流れ  >

 

上図: 通常の税制では、寄付者5百人と国民は合計2億円を納税し、国民に2億円が広く支出される。

シンプルで、国民全体が潤っています。

 

下の図: ふるさと納税が行われると大変な事態が起きた。

既に見たように、消費が減り、国民サービスが減り、減税で納税額が減り、結果、赤字なので増税される。

 

 

* まとめ 問題点の整理

ふるさと納税前後を比較する。

 

l 消費が減る。

2億円から合計8千5百万円に減る。

 

実は、こんな事をしているから経済が没落するのです。

数年以内に、ふるさと納税額は1兆円に達します。

すると前述の試算値から、毎年1兆1千5百億円の消費が減り、経済の足枷になります。

これを防ぐ為に1兆円の増税をしなければならないが、するとまた消費が減り、経済はダウンする(消費増税は最悪)。

結局、こんな無駄を繰り返している限り、日本は浮かばれない。

 

l 市民サービスが減る。

2億円から7千万円に減る。

政府は市民サービスを減らすことに無頓着です。

 

l 徴税は逆進性になり、かつ減る。

結局、今後も毎年、寄付者(高所得者)には1兆円減税、一般国民(低所与得層)には1兆円増税か赤字国債発行になる。

これも格差を拡大させる。

 

 

* まだ深刻な問題がある

 

l ふるさと納税は、さらに自治体を疲弊させる。

支出は幾分増えるが変動があり、長期的な支出に使用出来ない。

結局、自主性のある経営を志向できない。

今の制度では、自治体は寄付金獲得競争で赤字すれすれまで返礼品業者に寄付金を注ぐだろう(表向きは出来ないが、少しでも収入増になる)。

 

本来、中央政府の徴税権をもっと地方に移管し、交付金のような自主性を阻害する税制を改めるべきです。

 

l 未だに政府は需要喚起策が分かっていない。

土建中心の公共工事や富裕層・法人への減税しか頭にない。

一部官僚は問題を理解しているが、今の政府では胡麻すりが横行し諫言出来る状況にない。

政府(与党議員)は選挙目当の人気取りと業界保護から 抜けられない。

これは明治期からの古い体質、そして自民党長期政権の弊害の最たるものです。

 

l マスコミや経済学が機能しておらず、国民に正しい判断材料が提供されていない。

2008年に、諮問を受けて「ふるさと納税研究会報告書」が提出されているが、一部を見ただけで絶句した。

言い出した人物(菅)への忖度で、地方活性化の嚆矢になると讃え、細かい点を指摘しているだけで、私が指摘して来た重要な視点はまったく無い。

私は小さな地方自治体の諮問委員のようなことをしているが、これが実情です。

 

これも長期政権による癒着が災いしている。

 

l 「ふるさと納税」の基本的な欠陥は、通常の寄付行為の所得控除を「全額税額控除」に替え、商品を提供できる自治体を「寄付先に認定」したことです。

 

* 最後に

 

このような害悪を垂れ流す政策が堂々と行われ続けているからこそ、日本は没落せざるを得ないのです。

これは日本政府の愚かさが如何に無駄を生み出すかの典型例です。

このシミレーションは、結局、減税と増税の問題に尽きます。

私は経済専門でないので、ミスがあるかもしれませんが、ご容赦のほど宜しく。

 

 

次回に続きます。

 

*1

 

前回、ふるさと納税の現状を見ました。

今回は、納税から消費への流れを追い、

如何に馬鹿げているかを説明します。

 

 

* 通常の税の流れ

 

 

< 図2. 通常の税の流れ >

 

先ず基本から。

 

例えば、年間収入300万円の人は、幾つかの所得控除(配偶者31万など)を差し引かれ、課税所得額が100万円になり、これに所得税と住民税の合計30%(所得で異なる)、30万円を国と自治体に納めます。

この税金は広く国民に使われます(消費)。

 

 

彼が「国境なき医師団」に10万円寄付していたらどうなるか?

 

 

< 図3.普通の寄付行為 >

 

図の説明

寄付者は確定申告すれば2.9万円が還付され、彼の実質負担は7.1万円になる[(10万円-手数料2千円)x税率30%=2.94 ]。

この2.9万円は結果的に他の国民の納税か赤字国債で支払われる。

 

 

* ふるさと納税の金流れ

 

規模感を掴むために、大きな集団を想定します。

 

年収1200万円の5百人が各20万円のふるさと納税を行う。

それは都市部から地方の自治体への総額1億円の寄付になる。

彼らが4人家族とすると、ふるさと納税の全額控除の上限額は20万円なので全額還付される。

 

この結果は図のようになります。

 

 

 

< 図4.金の流れ 1 >

 

図の説明

地方の自治体に7千万円、返礼品業者に3千万円が入る(返礼品上限額は寄付金の30%)。

寄付者の住む都会の自治体は、税金1億円を支出し、国が最高75%補填し、最低でも2500万円の赤字になる(手数料2000円/件だけ入る)。

国は最大7500万円の赤字になる。

これらの赤字1億円を他の国民の納税か赤字国債で補う。

 

 

 

< 図5.返礼品無しのふるさと納税 >

 

この場合を見ると、返礼品の無い方が幾分良いように見えるが、実は国民と市民へのサービスが半減している(寄付者への還付で税が減る為)。

 

ここで異常に気付かれたかもしれないが、さらに問題がある。

 

 

* 返礼品がある場合、寄付者が消費を増やすかを検討

 

ポイントは二つあり、一つは返礼品がある事による消費減、もう一つは還付金による消費増です。

 

はじめに、返礼品による消費減を検討します。

 

 

< 図6. 返礼品人気ランキング >

 

返礼品の多くは魚介・肉・果物・パン・米・鍋セット・惣菜・加工食品・酒類等の食品で占められている。

すべて日常的に消費しているものです。

残りの家電・日用品なども、同様で多くは再度買う必要がないでしょう。

返礼品の実勢は、市場価格で寄付金の65〜109%(還元率)で手に入り、平均を少なめの80%と仮定した(還元率は「ふるさと納税ガイド」サイトで参照)。

 

ゆえに寄付した500所帯は寄付額の80%、8000万円相当の返礼品(魚介と肉など)を手に入れると推測する。

 

彼らは返礼品で食品を手に入れたら、日常購入している食品を減らし、返礼品が贅沢品なら、日常の物は安くするだろう。

例えば返礼品の肉1kgを食べて、日常食べている1kgを500gに減らすと想定する(もっと減らす可能性は高いが)。

 

従って500所帯は返礼品の市場価格8000万円の50%、4000万円(80%x50%=40%)を節約すると推測する(追記で詳細説明)。

 

 

次は、還付(減税)による消費増を検討します。

 

 

 

 

< 図7. 所得減税効果と定額給付のアンケート >

 

上図

右の棒グラフの青は給付金のGDPに対する経済効果で、1年目に23%の効果が出ている(2年度以降は通常の消費でも効果があるので省く)。

左の消費減税の方が2倍以上効果がある事に注意。

 

下図

これは定額給付を受けたら、国民が消費するかどうかを聞いたアンケート結果です。

結果は、20%の人が、新たな消費をするだろうと応えている。

ふるさと納税は年収1千万円以上の人に多いが、彼らでは30%になっている(別資料)。

 

これらを勘案して、還付金1億円の25%、2500万円を新たに消費するとした。

 

 

* 結論

 

現状のように返礼品が手に入る場合、寄付者は寄付額の40%を節約し、一方で新たに25%消費し、差額15%の消費減となる。

結果、1億円の15%、1500万円の消費が減ると推測した。

 

 

次回、この消費減を含めて、ふるさと納税が如何に経済をダメにしているか説明します。

 

 

追記: 減る消費額の推定

 

総務省: 2018年の総世帯(平均世帯人数2.33人)の食費は月平均62,819円(外食11,724円、酒類2,667円を含む)。

外食と酒類を除外した月の食費は48,428円になる。

 

総務省のふるさと納税: 2018年の一人平均年間寄付金額118,000円、他の資料より、寄付は平均6件に分けられおり1件当たり平均19,667円となる。

 

 

< 表8. 寄付者の消費行動 >

 

図の説明

毎月の食費は、前述の平均世帯のものとした。

返礼品額は還元率80%(寄付金の80%)で、前述の19,667円x80%=約1.6万円とした。

上表は返礼品を6回に分け、下表は3回に分けた。

 

返礼品を得た月は返礼品の半額を節約すると推測し、赤字で示した。

返礼品がまったく無い状況と比べると、節約することが理解できるはずです。

 

返礼品があるのに返礼品と同額・同量の食品を日常的に購入する可能性は零だろう。

つまり消費が増えることはない、減るだけです。

 

贈答用に返礼品を使うとしても、状況はあまり変わらないだろう。

常々送る先に返礼品の贅沢品を送り、さらに通常の贈答品を加えるよりは、購入を控えることになるだろう。

つまり消費は減ることになる。

 

 

 

 

 

*1

 

今回は、日本らしい経済政策を分析します。

これは菅元総務大臣の肝いりで始まった。

国民が羨望の眼差しで歓迎しているものです。

しかし百害あって一利なしの典型的な愚策です。

 

 

それは「ふるさと納税」です

 

5年ほど前、私は「ふるさと納税」が国民を馬鹿にし、虐げていると二重の怒りを感じたものでした。

そして何人かの人に意見を聞くと、皆一様に肯定していました。

さらに突っ込んで聞こうとすると、政府を批判する変な奴という目で見られました。

この人達は、この税制で節税しようとするわけでなく、単にその政策が経済や自治体に良いことだと思っているようでした。

 

こうなると私には怒りを通り越して絶望しかなかった。

これでは日本の経済復興は不可能だ!

政府が様々な愚策を繰り返し、ここ30年以上も没落を深めているのに、誰も気づかず、共に没落を受け入れるとは。

 

感覚の鋭い方であれば弊害に気付かれるはずです。

 

この策は菅元総務大臣の肝いりで始まった。

2014年末、この拡大に熱心な菅元官房長官に、ある官僚が諫言した。

「拡充が高所得者を優遇し、自治体の返礼品競争を過熱させる恐れがあるから、規制が必要」だと。

菅は反論もせず、当然是正もせず、翌年この官僚を局長から部外に左遷した。

 

日本には寄付行為が浸透しておらず、また自治体は、通常の寄付先である赤十字などと比べれば寄付に頼る必要がなく、正常な寄付行為から逸脱するのは必至でした。

この策が世間に広まって行くと、やがて寄付は高所得者に広がり、寄付先は都市から地方へと移り、節税と返礼品目当てが露骨になっていった。

そして寄付額は勢いを増していった。

 

 

 

< 2. 人気急上昇 >

 

ふるさと納税の実態を見ます。

 

熊本県のふるさと納税実績では、2018年から2020年まで「個人1件当たり寄付額」は7万、25万、5万と推移、ところが「法人・団体からの1件当たり寄付額」90万、90万、270万と額が大きく増えている。

一方、その合計の1件当たりでは11万、28万、9万で、ブームによる変動がある。

 

総務省のふるさと納税実績で、2013年と2019年の間、一人当たり12万と変化していない。

この間、寄付者は11万から400万人に達し、一人当たり6件に分散して行っている(分散の方が減税・手続き簡易化になる)。

またこの間、税額控除額/寄附額の率は35%から71%へと増加し、減税が目当てになっている。

 

この7年間の寄付者の減税総額(税額控除)は8797億円で、2020年には1兆円を超えるだろう。

返礼品上限額は、かつて寄付額の50%を越え、今は30%だが、実際は自治体の熾烈な競争で、返礼品の相場額は寄付金と同額に近い(ふるさと納税サイトの返礼品還元率100%)。

100万円寄付すると2千円だけ引かれて99.8万円が還付される(年間所得3000万円以上なら可能)。

さらに現在でも寄付者の選んだ商品が市場価格で100万円近く届くことになる。

こうして高所得層の参加で益々繁盛している。

 

ここまで読んでも、まだ「これにより経済が活性化し、少なくとも地方自治体には良いこと」と見る向きもあるでしょう。

 

確かに、ふるさと納税のサイトは花盛りで、購買意欲が増し誘惑に負けそうです。

会計事務所のサイトでは、「是非、節税にふるさと納税を、特に高額納税者は見逃してはならない!」と謳っている。

批判的な記事やサイト見つけることは困難です。

 

 

何が問題か?

 

しかし問題はてんこ盛りです。

 

無駄を生む返礼品、藁をも掴む思いで競争に走る自治体、実際は消費を減らす策で、返礼品業者だけが潤い、寄付者の住む自治体と政府では赤字が増え、国民へのサービスが減少し、最後には国民がツケを払うことになる、そんな馬鹿げた策です。

寄付された自治体はわずかに得するでしょうが、最も得をするのは寄付者の高所得層(年収1千万円強が中心)で、税逃れとタダで同額の商品が貰えるからです。

 

実は、これ以外にも長期的に日本をダメにする深刻な問題があります。

 

しかし、いまだに政府はめげず、国民も掠め取られているとも露知らず羨望の眼で見ているだけです。

「ふるさと納税」は、需要喚起策の誤った典型例で、日本らしい愚策のオンパレードです。

 

 

< 3.寄付金に影響が出ている >

「青棒」全体の寄付金は増えているが、「赤棒」ふるさと納税が急激に本来必要な「国境なき医師団」や「国連世界食糧計画」などへの寄付を減らしている。

 

最大の問題は、国民へのサービスを減らし、消費を減らし、富裕者を減税していることです。

 

なぜこのような事になったのか?

愚かな政治家が人気とりでやり始めたが、経済と税制を知らず、あるタガを外した為に、市場が苛烈な競争に追い込まれたからです。

(タガとは、寄付税制特例と寄付先の認定です)

 

 

次回から2回に分けて「ふるさと納税」が経済に与える致命傷を説明します。

 

 

 

 

*1

 

 

今回は、対馬独特の建築物を紹介します。

 

 

 

< 2. 椎根の位置、上が北 >

 

上: 対馬の下半分

紺色線の右が厳原、左が椎根で、この間は車で20分ほどです。

 

下: 小茂田浜と椎根の位置

黒線の右から来て、赤矢印の蒙古襲来の激戦地・小茂田浜に寄ってから、黒矢印の椎根に行きました。

 

 

 

< 3.対馬横断途中の車窓から1 >

 

 

< 4. 対馬横断途中の車窓から2 >

 

真っ赤な彼岸花が至る所で群生しており美しかった。

この辺りを走っている分には、特に対馬の山野と言う印象はなかった。

後に北部の上対馬や中央部の浅茅湾周辺を走ると、対馬独特の地形を目にすることになる。

 

 

 

< 5. 椎根に到着 >

 

上: 椎根の地図、上が北

赤線が観光バスを降りてからの散策ルートです。

Sから始め、Eで終わりました。

主に見た石屋根倉庫は赤矢印ですが、ここには合計5棟あるそうです。

 

下: バスを降りて、椎根川の橋を渡り、石屋根倉庫に向かう。

中央にこれから紹介する1棟が見える。

 

 

 

< 6. 1棟目の石屋根倉庫 1 >

 

上: 橋の上から上流、東側を望む

右岸にもう1棟が見える。

 

下: 1棟目の石屋根倉庫

確かに見たこともない造りです。

 

 

 

< 7. 1棟目の石屋根倉庫 2 >

 

まず初めに感じたのは、「なぜこんなに重い石を屋根に上げたのか?」でした。

次いで、小屋の柱にも違和感があり、何かが違う。

 

厳原が幾度も大火災に遭っていることと、この倉庫が西海岸に近いことから防火防風の為だとは察しがつきました。

江戸時代、瓦屋根が禁止されていたので、初めは裏山の石を載せていたそうです。

大正時代になると、発破技術が導入され浅茅湾に面した島山石で産出する見栄えの良いこのような泥板岩を使うようになった。

昔は対馬中にあったそうですが、今は南西部に合計40棟が残るのみだそうです。

 

左下: 私が違和感を持ったのは、写真中央の平柱のせいでした。

普通は角柱を使います。

屋根の重量を支えるのに適しているのでしょうか?

説明書きによると、平柱は山から切り出した丸太を半分に切って使うことから始まったそうで、対馬の伝統的な建物には良く使われているそうです。

この工法は、台湾や東南アジアにも見られるそうです。

 

それにしても大変な建築作業だったはずで、中で何を貯えたかは知らないが、ここまでする必要は無かったのではないかと思ってしまう。

村の中で見栄を張って競ったのだろう。

 

 

 

< 8. 二棟目の石屋根倉庫 >

 

上: 二棟目の石屋根倉庫

 

下: 瓦屋根の倉庫

 

 

< 9. 戻りの橋の上から >

 

 

< 10. 椎根川の対岸から >

 

次回に続きます。

 

 

*1

 

これから、日本固有の悪化要因を幾つか見ます

 

 

 

 

< 2. 2018年の賃金上昇率ランキング >

http://www.all-nationz.com/archives/1072475175.html

 

 

* 主に賃金を低下させる要因

 

A. 非正規雇用の拡大

 

B. 低賃金の零細中小企業、個人経営が多い

 

C. 低い最低賃金

 

 

< 3.2019年の最低賃金ランキング >

https://www.digima-japan.com/knowhow/world/8314.php

北欧が無いのは北欧が職業別最低賃金制の為。

 

D. 労働組合の弱体化

新自由主義の国では皆同じだが、賃金の高い国(北欧など)では組合組 織率は高い(図4と比較)。

 

 

 

< 4. 2008年の労働組合組織率 >

https://honkawa2.sakura.ne.jp/3817.html

 

E. 欧米の職業別・地域組合と異なる企業内組合

職業別の最低賃金がないので転職が困難で、労働市場が機能しない。

 

F. 男女間の賃金格差

 

G. 介護やタクシー業界などの賃金規制

 

H. 低賃金の技能実習生制度(移民労働者)

現状のような野放図な拡大は、やがて欧米のように低賃金化と治安悪化を招く。

 

 

当然、これらの問題は日本の政治がもたらした結果です。

 

* 日本の政治がもたらす悪化要因

 

I. 長期政権(自民党)がもたらす弊害

 

根本は自民党が特定産業や既得権益と癒着し過保護(腐敗)にすることです。

 

これは単純に、野党との政権交代がないことによるもので、歴史の必然です。

特に日本は政治文化が遅れたままなので、国民の多くは腐敗を当然視している。

 

一党のみが長期に君臨すると、経済的な癒着だけでなく、あらゆる社会的なものが腐敗し、国民から離れて行くことになる。

例えば、経済界だけでなく官僚(中央省庁だけでなく裁判所も)、マスコミ、学校、学界すら強固な癒着や忖度が蔓延しており、国民は政府の実態を知る事も訴えることも出来なくなり、社会は停滞して行くことになる。

 

特に官僚と自民党の癒着で深刻なのは特別会計(392兆円、一般会計100兆円だが)で、その規模の巨大さと不明瞭さが恐ろしい(民主党が切り込もうとしたが討ち死に)。

 

 

J. 活力を無くした地方自治体と公共企業体

 

地方を旅して気付かされることは、地方の衰退です。

この背景に、構造的な要因があり、戦後の税制が中央集権的であることが大きい。

一言で言えば自治体は中央からの許認可待ち、交付金待ちに慣れてしまって、自立出来なくなっているように見受けられる。

日本は先進国中、最悪ではないが、北欧に比べると活力がない。

 

 

K. 不甲斐ない野党

 

二大政党は欧米先進国では民主主義の根幹をなすと自認されているが、日本ではそうではない。

これが腐敗を招き、改革が進まない理由なのですが、出来ない。

国民は野党がだらしないから、自民党で仕方ないと思っている。

 

これが間違っているとは思わない。

だが、このまま一党長期政権が日本を支配し続けると、没落は必至です。

野党がなぜ脆弱なのか、その理由(初期の米国保護)を知り、政権交代可能な野党を育てない限り、未来はない。

 

 

L. 米国追従の弊害

 

米国追従は根を張っており、もはや軍事的にも経済的にも独立出来ず、運命を共にする可能性が高い。

 

しかし1980年代以降の米国の傲慢に過ぎる圧力が如何に日本の経済を悪くしたかを知れば、目が覚めるでしょう。

日本は経済的に自立すべきなのです。

大戦後、いまだに占領国に隷属している国は、世界広しといえども日本だけでしょう。

しかもGDPで2位にまでなった国で。

 

これに関連して、重要なのが近隣諸国、特に中国との関わりです。

米国の軍事的な思惑で、日本は大陸、特に中国と分断されている。

(今まで中国と友好を図ろうとした日本の政治家はなぜか短命です)

 

しかし、中国は既に経済・技術・軍事的に大国であり、対応を誤ると、日本は孤立するだけで済まなくなり、安全保障で致命傷を負うことになるだろう。

 

 

M. 時代遅れの需要喚起策(財政出動など)

 

日本政府は、いつまで経っても古い経済政策から脱皮できない。

 

土木事業中心の公共投資や富裕層や法人税の減税などです。

既にこれらの効果が低いことは経済分析から判明している(土木事業は乗数効果がかなり低くなっている)。

それでもまだ懲りずに繰り返している。

後に、ふるさと納税を検証します。

 

日本の経済学はノーベル経済学者が出ていないことからもわかるように遅れており、国の政策に良いアドバイスが出せないようです。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

*1

 

これまで、先進国衰退する要因を見て来ました。

これから没落を早める日本固有の要因を見て行きます。

私達はこの二つの悪弊を取り除かなければならない。

道のりは厳しいが、家族や人々に豊かな日本を残したい。

 

 

* 日本固有の問題とは?

 

現在、多くの欧米先進国が一様に衰退しているのは、新自由主義による経済政策と金融偏重と(放任主義のグローバル化)、そして蘇り肥大化した富裕者による金権政治と言えます。

しかし日本だけがさらに没落を早めているのは、日本固有の要因があるからです。

 

ここで日本と他の先進国を簡単に比べます。

 

日本の格差は先進国でもっとも酷い米英に次いで悪く、近年猛追しています。

日本は失業率こそ低いが、経済成長率は長年最低、累積債務は最悪です。

国民の大半の所得は減り続け、多い自殺者が不景気時にさらに増える。

良いのは治安と長寿命でしょうか。

かつて先進国の評価基準である多くの経済・社会指標ランキングで日本は20位以内もあったが、とうの昔に多くが30位を越え150位以下もある(幸福度、ジェンダー、政治腐敗、報道の自由度など)

 

日本固有の悪化要因は、政治・経済だけでなく文化まで多岐にわたります。

なぜこんな国になってしまったのか?

それは大陸に近い島国と最古層の農耕文化(エマニュエル・トッドが指摘)、さらには敗戦後に米軍に占領されたことが大きい。

もっとも現在、悪化を押し進めているのは自民党と鉄のトライアングル(政官財)ですが。

 

口惜しいのは、敗戦後は国民の努力が実った時代であったにも関わらず、国民自ら没落の道を選んでしまったことです。

 

 

* ここで日本の没落を実感してもらいます。

 

私が推測するに、日本固有の問題に起因する経済損失は年間10~20兆円だろう(直感)。

「大したことないじゃないか!」

高々、GDP550兆円の1.8~3.6%に過ぎないと思われるかもしれない。

 

それでは下のグラフを見て頂きたい。

 

 

 

 

https://toyokeizai.net/articles/-/269822?page=3

 

このグラフは両国を1990年時点で100として重ねたものです。

もし日本が1990年以降もアメリカと同じだけ成長していれば、2018年で今よりGDPは1.55倍、550兆円が850兆円になっていたことになる。

この差は28年間、日本の成長率が米国より1.6%低いだけで生じていた。

 

つまり、年1%強(10兆円強)でも恒常的に経済を悪化せる要因があれば、致命傷なのです。

 

 

* ここで質問です。

 

経済成長を左右する最も重要な要因は何だと思いますか?

 

l 国民や企業の意欲

l 政府の政策(国の経済システム)

l 世界の状況

 

答えは簡単ではありませんが、多くの文明や国が衰退する時、ある共通のパターンがありました。

それは経済システムが機能不全に陥っていたことです。

これは同じ文化を持つ民族でありながら分割された国(米国アリゾナ州とメキシコに分割された都市ノガレス、朝鮮半島など)を比較することで明確になっている(「国家はなぜ衰退するのか上・下」参考)。

 

要は、主に政治腐敗などにより、通常の製造や販売以外の違法な行為で暴利を貪ることが横行し、やがて人々は経済活動への意欲を無くしてしまったからです。

例を挙げれば、賄賂で国から専売権を得て、暴利を貪るようなことです(歴史上限りない)。

また企業団体が、自らの生産性向上を放棄し、議会を動かし他国の最新技術の国内流入を阻止するなどです(19世紀の英国)。

要は金・軍事・政治力を持つ者が、互いの利の為に権力者と結託して、社会経済を歪め、腐敗させていくのです。

当然、人々はまともな創意工夫などしなくなり、悪事と格差が蔓延し、遂には没落します。

 

つまり、今の日本の没落は、腐敗した政府の政策が悪く、国民や企業が意欲を無くした状態と言えます。

敗戦後の一時期は互いに好影響を与えあったのですが。

さらに世界の状況も悪いと言えます。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

*1

 

 

没落は1980年代から始まった事、それを仕掛けた人々の動機も確認しました。

しかし没落を進めた政権を選んだのは国民でした。

残念ながら、このような事は幾度も繰り返され、今、さらなる危機が迫っている。

このことを見ておきます。

 

 

* 米英日のレーガン、サッチャー、中曽根政権誕生の背景

 

米英のレーガンとサッチャーには共通する点がある。

二人はスターウォーズ計画やフォークランド紛争で保守・右派として面目躍如を果たした。

この二人は、大戦の実戦経験がなく、野党からの政権交代を成し遂げていた。

 

一方、中曽根は大戦経験最後の首相でした。

(海軍経理として戦地で輸送に関わっていた)。

自民党は長期政権なので政権交代はなかったが、彼は一線を画した。

国土防衛では一歩踏み込んで米国との関係を良好にし、さらに原子力活用に舵を切った(よく言えば先進的、悪く言えば米国追従)。

 

(私は中曽根の視野狭窄に失望した。当時、日本の太陽電池産業は世界に先駆けて勃興し始めていた。ローマクラブの警鐘もありグリーンエネルギーへの以降は必至でした。しかし彼はこれを葬り去り、甚大な被害を生む原発に舵を切った)

 

この時代、国民の多くは戦争とは無縁になっていた。

戦前の激しい労働運動を知り、戦争の悲惨さを知った人々は、そろそろ現役を引退し始めていた。

戦後の人々は、努力が報われる時代に生きていた。

 

そんな中、国を没落に向かわせる政策とはつゆ知らず、国民は勇猛で甘い言葉につられて大転換を受け入れてしまった。

 

 

* なぜ人々は、無謀とも言える大転換を受け入れたのか?

 

これはスタグフレーション(不景気とインフレの同時進行)が労働者の賃上げにあると喧伝され、国民が信じたのが大きい(実際は原油高騰)。

 

確かにスト頻発、合理化反対、大労組組合員の怠慢などの問題があり、是正すべき点はあった。

しかし賃金上昇は景気後退の主因どころか、経済発展に欠かせないものでした。

 

国民が受け入れた背景には、保守(経済界)と革新(労働界)、タカ派とハト派の対立に煽られてしまったことが大きい。

 

米英は既に経済に陰りが見えていたので、日独に対して逆転を目指す必要があった。

それに加え強国再帰へのタカ派的な訴えは平和慣れしていたことで、甘美に捉えらた。

 

一方、日本は経済発展中だったので、転換の必要は無かったが、米国に追従せざるを得なかった(要求に逆らえず真似しかできない)。

 

 

ここで扇動に振り回されて来た米国を概観します。

 

 

 

*2

 

* 米国に見る、煽りと分断の歴史

 

最初に扇動した人物は共和党上院議員マッカーシーでした。

彼は1948年頃より、共産党シンパの排除を始め、一大センセーションを巻き起こした。

その魔の手は政府・軍部内から映画界にまで及び、多くの人が職場から一掃された。

彼の強硬な姿勢は国民(保守層・保守的キリスト教徒)から絶大な支持を得て、レーガンもこれに加担して人気を博した。

 

しかし、やがて手法が違法で民主主義を破壊するものとして批判され、数年で終焉を迎えた。

 

 

 

*3

 

1972年、ニクソン共和党大統領によるウォーターゲート事件が起きる。

これは政敵である民主党本部への盗聴をホワイトハウスが命じたものでした。

 

 

次いで、後に下院議長となる共和党のギングリッチが出現した。

彼は南部の下院議員で、レーガン政権後沈滞していた共和党の再建に取り組んだ。

1994年、彼の活躍で、共和党は中間選挙で大勝し、上院と下院で多数党となった。

彼は保守政界のキーパーソンになっていた。

 

彼の選挙戦略はそれまでとは一線を画したものだった。

彼は政治を戦争と訴え、絶大な人気を得て、共和党執行部も戦闘態勢に入っていた。

 

民主党のある議員は彼をこう評した。

「彼はアメリカ政治を『たとえ意見が一致しなくとも相手を尊重する』というものから、『反対者を不道徳な悪人として扱う』ものに変えた。」

 

この後、民主党も対決姿勢を強め、憲法違反裁判、最高裁人事、弾劾裁判、選挙区変更などで互いに自党を有利に導く争いに陥っていくことになる。

 

さらに折からの規制緩和が扇動を致命的にした。

政治献金の自由化(無制限)は選挙を富裕層に有利した(合憲との判決)。

また「報道の公正」の規制解除が、偏向し扇動するメディアを勢い付けた

FOXニュースなど)。

こうして政党への信頼が低下する一方、多くの人々が扇動されることになった。

 

 

 

< 4.トランプとギングリッチ >

 

こうした中、希代のアジテーター、フェイク男、トランプの誕生となった。

彼は2017年、大統領を去る事になったが、彼を待望する人は依然多い。

 

既に政治は正義や科学的な論理とは無縁になりつつある。

(正義は、法の理念であり人類社会が培って来たものです)

そこには、両者が話し合い、政策を調整し、協力し合う姿はない。

あるのは敵か味方の区別だけであり、一度どちらかに着くと、破局まで突き進む。

 

実は、これは第二次世界大戦前のドイツや日本で起きた事であり、現代の日本にも当てはまる。

私はキナ臭いものを感じてしまう。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

*1

 

前回、1980年以前は、

米英日の労働者にとって夢に近づいた時代でした

それでは大転換で誰が得をしたのか?

彼らこそが今も没落に拍車をかけている。

 

 

* 憤慨した勢力は立ち上がった

 

彼らとは、半世紀前までは順風満帆だった富裕層や企業家、投資家でした。

俗に不労所得を得ていた人々です。

 

かつて投機に対する規制は緩かったが、世界大恐慌以降、規制は強化され、投機家の旨味は減っていた。

さらに二度の大戦は富裕層への累進税や相続税を著しく高めていた。

また企業家は、労働者や農民の権利要求と賃金上昇に頭を痛めていた。

 

そこに高インフレが10年以上も続き、富裕層の莫大な資産が見る見るうちに目減りして行った。

例えば、インフレ率10%が20年続くと現金1000万円は120万円に目減りするので、資産家は背筋が寒くなったことでしょう。

 

そこで一大キャンペーンが張られた。

「労働者の賃上げが、インフレを招き、国民の暮らしを圧迫している」と。

 

一方、大多数の国民(労働者)はどうだったのだろうか?

当時、概ね賃金はインフレ率以上に上昇していた。

例えば、持ち家を建てる場合、インフレによる高金利で借金しても、持ち家の価値が上がり、返済額もインフレで目減りしていくので、遅れて買うより早く買う方が得策でした。

当時、労働者の給与は上がり続け預金金利も高かったが、現在は給与は下がり続け預金は零金利でまったく増えない、まったく上手く出来ている。もっともインフレで実質増加はそれほではなかったが、今よりは良かった。

 

こうして経済成長は続いていた。

最後にはスタグフレーション(不景気とインフレ)が起きたが、いまのデフレ時代を長く経験すると当時が懐かしい。

 

当時、政府と経済界はしきりにインフレが悪夢だと喧伝しており、私も不景気を意味するデフレの方が良いのではと思うことがあった。

ところがアベノミクスではインフレが待望され、リフレ派はかつての好況を夢見たが、賃金低下をまったく無視していたので完全に失敗した。

如何にも間が抜けていて、天才と馬鹿は紙一重の好例です。

 

とにかく、憤慨し立ち上がった人々の狙いは、不労所得の減少を食い止め、かつてのように資本が資本を生み出す時代に戻すことだった。

 

しかし、これだけではなかった。

その後、富裕層が富を集中させるに伴い政治は国民から乖離して行った。

そして格差拡大と成長の長期減退が始まった。

さらに金融危機が繰り返すようになった。

 

これらの結果を、当時のトップや勢力が望んだと思わないが、今は既得権益を手放したくないので、国民を洗脳し逃げ切りに必至です。

国民が気付くまでは・・・。

 

 

* データーで大転換の実態を見る

 

 

 

< 2.所得格差の推移 >

 

赤矢印は大転換政策の時期を示す。

各国の上位1%、10%の所得階層の所得が全体に占める割合を示す。

すべて同じ1980年代より、上位階層の所得が急激に増加し、今も続いている。

 

上図: 大転換政策を率先した米英日で格差が拡大している。

 

下図: 米英では上位1%の所得上昇がさらに激しく、格差は歴然だ。

それに比べると北欧やフランスは格差を抑えている。

 

 

 

< 3. 最高所得税率の推移 >

 

青線はF.ルーズベルト、赤線はサッチャー政権の時期です。

米国と英国の税率の上下と、図2の格差の上下が逆向きに対応しているのがよくわかる。

 

 

 

< 4. イギリスと世界の資本の役割 >

 

ピケティ著「21世紀の資本」より借用。

赤矢印の濃い赤がサッチャー政権。

サッチャー登場の半世紀前は、世界的に労働運動が盛んで、

労働所得は上昇し、資本所得(不労所得)は減り続けていた。

 

上図: イギリスでもその傾向は歴然としている。

 

下図: しかし、サッチャーらが大転換政策を実施すると、資本所得の収益率が増え、それまで上昇していた成長率が逆に下がった。

 

 

これこそが大転換の狙いであり結果だったのです。

 

 

次回に続きます。