さて。


勘違いしまくったアメリカ人俳優二人のスケジュールに合わせて急遽海を渡ってきた為、共演の蓮の帰りも当然彼らが帰るまでに戻らねばならぬが故に勿論超特急。



「…本当なら直接報道陣の前に立って二人揃って発表したいのに…。」



「…仕方ないです、スケジュール合わせようにも蓮さんはあっちが活動拠点なんですから。
私もこっちに動いてきたばかりですから、直ぐにそっちに活動拠点戻すって訳にもいきませんし。
でも!!
お互いに頑張っていきましょうね。
仕事も、プライベートも。
………ほんの少しでも時間が出来たら、メール、下さいね。
私もしますから。」



「……ん。
出来るだけ電話もするよ。
俺の鼓膜を撫でる君の声は至上の音色だからね。」



「んもう…蓮さんたら。///
  それそのまんまお返ししますね。
…でも声聴いたら絶対電話切った後で哀しくなっちゃうと思う…。
逢いたくて堪らなくなるもの…。」



「キョーコ…。」



「…蓮さん…。」



「お~い、……お前ら、社長室まで来てイチャコラベタベタラブラブするのはどうなんだ?
まぁ公表するまでは表立っていちゃつくのはマズイし、また暫しの別れだから名残惜しいってのは解るが…。
俺がいるのを完っ全に忘れてねぇか!?」



完全に二人だけの世界を作ってイチャコラしている蓮とキョーコに、本当にコイツらこの前まで本当に資格が無いだの恋愛拒否だの壊死してただの言ってた奴らなのかとハリセンツッコミを入れたいローリィであったが、そこは世界中に愛を叫んで憚らぬ大物。


予想を超えていようとも幸せ溢れる恋人たちのラブラブっぷりを見られれば満足なので文句はつけない。



「…まぁいいや。
蓮お前ぼちぼち出ないと飛行機に間に合わんぞ。
いちゃつくのはそこまでにしておかないと俺、お前らのスケジュール弄って当分逢えなくしちゃおっかな~。」


「そんなの嫌ですっ!!
…い、意地悪言わないでください社長さん…っ。」



愛を全力で世界中に叫んで憚らぬ社長さんのお言葉とも思えません!!と目を潤ませて訴えるキョーコに冗談は通じないと瞬時に悟ったローリィはひらひらと手を振って冗談に決まってんだろが、んなこたしねえよと慌てて誤魔化した。



「時間ねえんだ、名残惜しいだろうがぼちぼち行かねえと本当に飛行機乗り遅れるぞ?
心配すんなっつーの!
記者会見はちゃあんと衛星生中継にしてやっから!!」



参っちゃうよなぁお前らにはと苦笑いしながらもどこか楽しそうにしているローリィに、二人は今度こそホッとしたのか抱きしめあっていた身体を離し、蓮は行ってくるねと手を振り何度も振り返りながら社長室を後にした。



「…1週間だけ我慢しろ。」



寂しげに見送ったキョーコの様子にポリポリと頭を掻きながら俺も大概お前らには甘いよなと苦笑いするローリィに、声を掛けられたキョーコは首を傾げた。



「…さっきも言ったが、海の向こうとこっちで映像繋いで生中継の記者会見開けるように調整してやっから。
あと1週間だけ我慢して他の奴らからの要らねえラブコール弾き返しとけ。」



そっから後は全開でのろけまくって良いからよと弄る気満々な笑みを浮かべるローリィに、キョーコは素直にはい、と満面の笑顔で頷き返していた。




それからというもの。



キョーコと蓮の超遠距離ラブラブメールが海を越えて飛び交っていた。


空き時間のホンの少しの時間でも《こっちは今こんな仕事です、夜は何時に終わる予定です、今夜も少しは話す時間が取れたらいいな》などとあのラブミー部最強ラスボス乙女は何処行ったと言わんばかりのメールを送信する恋する乙女っぷり満開の京子の姿に周囲が気付かぬ筈もなく。



僅か1週間の間にマスコミはローリィすら想像出来ぬほどのヒートアップを見せた。



当然群がるその他大勢の勘違い野郎共も爆発的に増加したのだが、キョーコも最愛の蓮との会見を指折り数えて待っている身、振る時だけは容赦なくばっさりと蹴散らしていった。


その蹴散らした勘違い野郎共の中に。


キョーコの人生史上最大の勘違い野郎も当然含まれていた。




「やっと見つけたっっ!!
お前電話くらい出やがれ!!
この俺がわざわざ懸けてやってるっつーのに着拒なんかしやがって~!!」



うんざりする程聞き慣れている幼馴染みの叫び声に、キョーコは盛大な溜め息を吐かずにはいられなかった。



「…それが2年以上顔合わす事無くて久々に会った幼馴染みに開口一番言う台詞ってのがアンタらしいっちゃらしいけど…。
一応幼馴染みとして注意してあげるわ、TPO(時と場合)を考えて行動しなさいよ、カリスマロックシンガーの【不破 尚】さん。
お互い二十歳越えた大人でしょ?」



もう少し立場とか考えて行動した方が身の為よ、とお互い嫌という程性格を把握している幼馴染みからの忠告に、言葉が瞬間的に詰まった尚だったが、自分との話は無いとばかりにマネージャーと次の仕事へと移動するために自分の横をすり抜けようとしていたキョーコの様子にムッとなり腕を咄嗟に掴まえていた。











何年経とうとおバカはおバカ♪

叩きのめすお決まりパターンは次回をお待ちくださいませ。(^-^)v