注意:この回ではバカの親が登場します。

しかしながら書いてる私が関東人なので、京都と大阪の言葉の違いもよく分からない未熟者ですので、嘘臭い関西弁もどきになることをご了承ください。

関西の方々にはご不快な点も多々有るかとは思いますが、寛大なお心でスルーしてくだされば幸いです。
m(__)m











「…はっ、何の冗談すか?
活動休止だ?
バカなコト言わないで下さいよ。
第一俺まだ祥子さんが担当代わった訳も聞かされてないんすけど?」



「…安芸なら懲戒解雇が決まったぞ。
未成年の、それも事務所が売り出してる異性の歌手と同棲するようなふしだらな社員は居るだけ迷惑だからな。
君はちょっといい女のマネージャーの所に転がり込んだだけのつもりかもしれんがね、彼女の様な社会人…成人した良識ある筈の大人が、血縁関係のない未成年者を保護者の同意も無しで一つ屋根の下に置くこと自体が犯罪行為なんだよ。
よくよく調査してみれば、君は実は家出少年であることも判明したしな、うちとしてもそんな困り者を使う訳にはいかない。
いい機会だ、先ずは保護者の了承を取り直して来て貰おうか?」



前の書類の事は目をつぶってやると言われ、それもまた有印私文書偽造という犯罪行為であったのだと付け加えられ、尚は最早返す言葉も無かった。



逃げられないように拘束された上でその日の内に慌ただしく独身寮の私物を纏めさせられた尚は、事務所の社員が同行した上で新幹線で京都に向かわせられたのであった。




『うちの社員と所属歌手が面倒掛けていた様で申し訳無かったです、宝田社長。
只今然るべく処分をしておりますのでもう少し待っててください。』



「はっはっは。
  流石は業界5指に入るアカトキの社長だ、仕事が速くて助かるよ。」



『いやいや、自分の所の所属歌手の素行の悪さを把握していなかったとは、お恥ずかしい限りです。
宝田社長が事を大きくしないでくださったお陰で社名に傷が付かずに済みました。
改めてお礼申し上げます。』



「…なぁに、うちも成長株の京子に傷を付けたくなかっただけさ。
今後はこういう事の無いようにしたいもんですな。
…では。』



LME・アカトキ双方のトップ会談が行われていたその頃、尚はアカトキ社員同行の元、実家の門を潜ろうとしていた。



「…は~、本当にお坊っちゃんなんだね、君は。」



「…………」



入り口に辿り着いた社員は広大な敷地を誇る老舗料亭旅館を前に溜め息を吐いていた。



会社から既に連絡しておいた為、如何にも女将らしき中年女性と、板長らしき中年男性が正面玄関で待っているのが見え、今回の件を全権委任された社員は足取りの重い尚の背中を押すようにして歩き出した。




「…不破君のご両親ですか?
初めまして、アカトキエージェンシーの田口と申します。
お忙しいところ時間を作っていただきありがとうございます。」



尚はこの時初めて同行していた社員の名が田口というのだと知った。


…つまり同行していながら名前一つ満足に訊く礼儀すら尚は持ち合わせていなかった事になる。



「…態々遠いとこお越し下さいましてほんにご面倒おかけしますなぁ。
うちがその子…松太郎の母どす。
隣におりますのがうちの主人で松太郎の父で、ここの板長をしとります。
ささ、先ずはご案内しますよってこちらに…。」


女将に案内された田口は、旅館内に設えられた一室で両親から深々と頭を下げられていた。



「改めまして、うちの家出息子がほんまにご迷惑お掛けしまして…申し訳ございません。
…ところで松太郎?
あんた、キョーコちゃんはどうしたんや?
家出した時、キョーコちゃん一緒やったやろ?」



「あん?
  俺がデビューした時、面倒見てくれるヒトが出来たからな。
俺の世話するヤツはもう要らないだろ?
あんなのとくっ付けられるなんてゴメンだからな。」



だから棄ててやったぜと何の臆面も無く言ってのけた尚に女将も板長も顔色を無くしたが、田口がアタッシュケースから書類を取り出し話し出した事で顔色を取り戻した。



「…こちらが不破君が上京してからの調査表です。
親御さんの仰有るキョーコさんですが…現在LMEでタレントの『京子』さんとして活動中です。
ご存知なかったですか?」



渡された調査票に目を通していた板長は、みるみる表情を厳しくさせて田口に向き直りながら読み終えた資料を女将に手渡した。



「…田口さんどしたな。
態々このアホを連れてきて下さった事にはお礼申します。
しかしこないなアホをそちらさんはどうしたいとお考えですのや?」



「アホアホ言うなよクソ親父!!」



いきなり顎をしゃくってアホ呼ばわりされた尚が父親に噛み付いたが、逆に怒鳴り返される結果を呼んだ。



「喧しいわ!!
わしは今この田口さんと大人の話し合いせなならんのや!!
餓鬼は黙っとき!!」



一喝されて黙り込んだ尚の横で、氷点下の怒気を孕み始めた者がいた。


母である女将であった。



「…弊社上層部の考えを申しますと、社会的な常識が欠如しているとはいえ彼が音楽的才能を持っている稀有なアーティストである事は棄てるには惜しいと。
そこで一定期間再教育した上で活動再開の判断をしたいと考えております。
…勿論その為にはご両親からの承諾を頂く事が最重要課題ではありますが…。」



「…期間はどれくらい掛けて再教育するおつもりで?」



「最短でも3ヶ月、最長1年です。
改善が見られぬ場合は契約違反とみなし解雇もやむ無しと上層部の意見は一致しておりますが。」



「…では3ヶ月後に一度様子を見に来てくれまへんやろか。
それまでこのど阿呆の根性、うちらで鍛え直します。」



今まで黙ったまま資料を読んでいた女将が田口に向かって頭を下げた。


…が、顔を上げた怒気を孕む眼光の鋭さに田口は背筋が凍りつく気がした。












ちょっと長くなりました。

そして登場したバカ尚の両親ですが、一般常識に欠けた人達でも只の親バカでもないと思うんですよ。

でなきゃ旅館経営なんて出来ないだろう、という個人的判断から、多忙故の教育不足とみなして親にお仕置きは無しになっております。


さぁて、バカ尚の運命や如何に!?(笑)