やっと始まりましたseiさんからのリク第2弾!!


しっかり第2の罠に嵌まるべく頭の中で捏ね繰り回し、やっと第1話に漕ぎ着けました。



それでは↓からどうぞ♪♪





最近よく見かけるあの色気垂れ流しの美女たちは皆、俳優貴島 秀人の恋人らしい…という噂がまことしやかに業界内を流れ始めたのはいつだっただろうか。



「このCMの子、奇麗だし、色っぽいよなぁ。
 でも、見た事ないから新人かな?」


「こっちの子もすげー奇麗だぜ。
 でも、噂ではこの子達みんな、あの貴島 秀人のお手つきらしいぜ。
 どこから出てきたのか知らないけど、みんなすげー奇麗で色っぽいよな。
 こんな子達でハーレム作ってるなんて許せないぜ!」


あちこちで聞こえてくるそんな噂話に、もやもやした感情を抱えた男が1人いた。

芸能界でも指折りのいい男と讃えられ、アンケートではここ数年抱かれたい男No.1の座に君臨し続ける俳優、敦賀 蓮である。



話題に上っているCMの美女や美少女たちが実は全員同一人物だと知っている人間は、業界どころか所属事務所でも指折り数える程しかいない。

別にトップシークレットというわけではないのだが、驚くほど気付かない上に知っている友人知人ですらあまりの変身振りに開いた口が塞がらない程なのだ。



〈…相変わらず見事に化けるわね。
  最早物の怪染みてると言っても過言じゃないわ…。〉



〈流石は京子さん!!
見事な不死蝶振りだわ!!
私が認めただけの事はある!!〉



〈お姉さま素敵…♪
私もいつかお姉さまみたいにどんな服も着こなしていける女になりたいわ!!〉



〈キョーコちゃん…綺麗になりすぎだよ~。
闇の国の蓮さんの重圧でお兄さん、胃薬いくつ飲んでも足りないから!!〉



……等々。



そして噂に翻弄される者が他にもいた。



CM美女達をハーレムにしているとされた俳優、貴島 秀人である。



〈…何であんな噂が立つんだ?
彼女達には俺、一度も会った事ないんだけどな…。
ま、会えたら文句なしに携番アドレス聞きまくるし、誘いも掛けるけどね♪〉



…こちらはあわよくば噂の女性達とお近づきになりたい欲望満々ではあったが。



そんな貴島と対照的に、噂のCM美女本人である“京子”は混乱の極みであった。


何がどうしてそうなったのか、全くもって分からないからだった。



「…何であんな噂が立ったのかしら…。
貴島さんにご迷惑をお掛けしてどうしよう…。
  でもあの噂、誰かの意図を感じないでもないんだけどな…。」


キョーコの呟きは的を射ていた。


見た目百戦錬磨実状恋愛初心者のあまりのヘタレっぷりに、背中を蹴飛ばさんばかりの愛の鞭を振るった、事務所社長の仕業であった。



「…まぁったくよ~。
あのヘタレ、いい加減覚悟決めて踏み出しゃいいものをいつまでもうだうだやりやがって…。
いくらラブミー部員最強の最上君相手でも、俺の我慢の限界も近いんだよな…。」



ぶつくさと社長室でぼやくローリィに、控えていた秘書が次の指示を仰いだ。


ローリィはそれに頷き、なにがしかの指示を出し、秘書もそれに頷き一礼して社長室を後にした。



数日後。

悶々としたままのヘタレ俳優は、久し振りに想い一度の少女と見(まみ)えた。



「やぁ、最上さん久し振り。
頑張ってるみたいだね。」



「キョーコちゃん、見たよCM。
どれも大評判だね。」



会ったからには話題にせざるを得ない話を、社は敢えて蓮の前で口にした。



「あ、ありがとうございます。
それも“あれは誰だ”って評判ですけどね。」



苦笑いしながら、キョーコはいつものように蓮の食事情を気遣ったがスケジュールが合わないからと申し訳なさそうに挨拶だけして去って行った。



去って行く後ろ姿を見送りながら、噂がただの噂であることに安堵した蓮は、僅かながらのキョーコとの逢瀬の余韻に浸りながら次の仕事に向かうのだった。



キョーコの次の仕事を訊かなかった事が、後で大波乱を巻き起こす事になるとも知らず…。





「やぁ、京子ちゃん久し振り。
今日は宜しくね?」



「おはようございます、貴島さん。
こちらこそ宜しくお願いします。」



あのDARKMOONの打ち上げ以来の共演となるCM撮影現場で、京子と貴島はにこやかに挨拶を交わしていた。



「…それにしても今回は京子ちゃんとの恋人役か~。
役得役得♪
いっそのこと本当の恋人にしない?
俺の事。」



「またまた、ご冗談を仰らないで下さい。
共演された女優の皆さんから伺ってますよ?
貴島さんは挨拶代わりにナンパするって。」



「え~?
俺はいつだって本気なのに、みんな本気に取ってくれないだけさ。
美しい華を愛でずして何の人生か、ってね。」



本気か嘘か判らない貴島の言動に、その場にいたスタッフ達も交えた和やかな談笑は、それぞれの準備の時間まで続けられた。