キョーコはかつてクーが日本で話した言葉を思い出して固まっていた。
---生きた宝石と称される妻---
---妻や息子の美しさは最早人間(ヒト)のそれではない---
[先生が言っていたのって比喩じゃなかったのね…。
本当に綺麗…妖精の女王様がいたらこんな感じ…?
っていうか最低17年前に子供を産んだ女性(ヒト)にはとても思えないわ…。]
実際は20年以上前なのだが、キョーコが知る筈もない。
漸く意識を取り戻したメイドと戻ってきたクーが自分を呼ぶまで、キョーコはまばたきもせずに目の前の麗人を見詰めていた。
《申し訳ありません奥様、急に貧血が…。[本当は違うけど言えないわ]》
《ただいまジュリ。
その子が今日から取り敢えず数日預かるキョーコだよ。
固まってるから人形みたいに見えるけど、ちゃんと人間だから。
キョーコ、私の最愛の妻、ジュリエナだ。
ママと呼んでやってくれ。
ジュリ、この子が“日本でできた息子”だよ。》
キョーコとジュリの間に立ってそれぞれを紹介してクーは一歩下がった。
キョーコの反応は予想出来なくとも最愛の妻の反応は十分に予想出来たからだ。
《~~~きゃあぁっ!!
なぁんて可愛らしいの!?
逢いたかったわぁ!!
こんなに可愛い子がクオンを演じて見せたの!?
貴方だけ見たなんて狡いわクー!!
明日はクオンになって私とデートしてくれなきゃ、私の寿命は3時間よっ!!》
《…ジュリ、その口癖は勘弁してくれ…。
最愛の君を失ったら私は生きてはいけないよ。》
《く、口癖なんですか!?
あ、改めてご挨拶させて下さい。
数日間お世話になります、キョーコ・最上といいます。
よろしくお願いいたします、Mrs.ヒズリ。》
《……クーの事はパパって呼ぶって聞いてたから、私の事もママって呼んでくれないかしら。
貴女は“もう一人のクオン”なんでしょ?
だったら私だってママって呼ばれたいのよ…ダメ…?》
波打ち輝く金色の髪に、垂れた犬の耳が紛れて見えた気がした。
そしていつかどこかで見た感じ…既視感(デジャヴ)も。
《…ダ、ダメじゃない…です。
…よ、よろしくお願いしますね?マ、ママ…。》
照れながらも勇気を出してキョーコがそう呼ぶと、ジュリは息が出来なくなりそうな勢いでキョーコを抱き締めたのだった。
キョーコは案内された部屋で荷物を解くと、寛げる服に着替えてダイニングに戻ってきたが、目の前に拡がるある意味地獄絵図のような料理に顔を引き吊らせていた。
クーからかつて聞いていた通りの斬新かつ神秘的で独創性に溢れたジュリの料理は、キョーコが以前先輩からご馳走になったマウイオムライスに勝るとも劣らない味と食感の群れであった…。
翌日。
朝早くから起き出したキョーコは、昨夜知り合ったばかりのふくよかなメイド、カリナとすっかり意気投合して朝食を作り、ヒズリ夫妻を迎え入れた。
《…そうだキョーコ。
正式に契約を結ぶ事になった訳だし、撮影が始まれば長期でアメリカ暮らしだよな?
留学の話はどうするんだ?》
50人前のベーコンとスクランブルエッグを口に運びながらクーが訊くと、キョーコは心が決まったのか、ハッキリと決意を口にした。
《はい、こちらでするべき事も出来ましたし、本場で演技の勉強もする機会に恵まれそうですし…。
学校の勉強はより視野の拡がったものが出来そうなので、思いきって留学しようと思います。
先立つ物に関しましても奨学制度を利用出来そうですから、その辺は問題ないと…。》
《よし決まりだな!!
留学先は追々詰めるとして、ホームステイはうちだ!!
早速ボスに連絡するからな!?》
ニコニコしながら高らかにクーが宣言して立ち上がると、ジュリも賛同した。
日本が真夜中であるとキョーコが慌てて制しても、メールだから心配要らないと一蹴されて、ヒズリ夫妻を止められる者はいなかった…。
それから帰国するまでの数日間、怒涛の親子ラブラブごっこが繰り広げられた。
クオン少年に化けたキョーコにジュリが号泣したり、変装させたキョーコをクーがジェレミーのいる撮影所に連れて行ってエキストラ出演させたり、ドレスアップさせられて友人のパーティーに引っ張り出されたり…。
散々連れ回されたキョーコが帰国の飛行機に乗った途端、離陸を待たずに眠り始め、機内食を一度も口にすることなく眠り続け、成田に到着してキャビンアテンダントに揺り起こされるまで起きられなかったのは仕方のない事だったと言える。
ちまちまだらだら書いてましたので更新が遅れました。
さ~、次は久々の事務所で一騒動!?
---生きた宝石と称される妻---
---妻や息子の美しさは最早人間(ヒト)のそれではない---
[先生が言っていたのって比喩じゃなかったのね…。
本当に綺麗…妖精の女王様がいたらこんな感じ…?
っていうか最低17年前に子供を産んだ女性(ヒト)にはとても思えないわ…。]
実際は20年以上前なのだが、キョーコが知る筈もない。
漸く意識を取り戻したメイドと戻ってきたクーが自分を呼ぶまで、キョーコはまばたきもせずに目の前の麗人を見詰めていた。
《申し訳ありません奥様、急に貧血が…。[本当は違うけど言えないわ]》
《ただいまジュリ。
その子が今日から取り敢えず数日預かるキョーコだよ。
固まってるから人形みたいに見えるけど、ちゃんと人間だから。
キョーコ、私の最愛の妻、ジュリエナだ。
ママと呼んでやってくれ。
ジュリ、この子が“日本でできた息子”だよ。》
キョーコとジュリの間に立ってそれぞれを紹介してクーは一歩下がった。
キョーコの反応は予想出来なくとも最愛の妻の反応は十分に予想出来たからだ。
《~~~きゃあぁっ!!
なぁんて可愛らしいの!?
逢いたかったわぁ!!
こんなに可愛い子がクオンを演じて見せたの!?
貴方だけ見たなんて狡いわクー!!
明日はクオンになって私とデートしてくれなきゃ、私の寿命は3時間よっ!!》
《…ジュリ、その口癖は勘弁してくれ…。
最愛の君を失ったら私は生きてはいけないよ。》
《く、口癖なんですか!?
あ、改めてご挨拶させて下さい。
数日間お世話になります、キョーコ・最上といいます。
よろしくお願いいたします、Mrs.ヒズリ。》
《……クーの事はパパって呼ぶって聞いてたから、私の事もママって呼んでくれないかしら。
貴女は“もう一人のクオン”なんでしょ?
だったら私だってママって呼ばれたいのよ…ダメ…?》
波打ち輝く金色の髪に、垂れた犬の耳が紛れて見えた気がした。
そしていつかどこかで見た感じ…既視感(デジャヴ)も。
《…ダ、ダメじゃない…です。
…よ、よろしくお願いしますね?マ、ママ…。》
照れながらも勇気を出してキョーコがそう呼ぶと、ジュリは息が出来なくなりそうな勢いでキョーコを抱き締めたのだった。
キョーコは案内された部屋で荷物を解くと、寛げる服に着替えてダイニングに戻ってきたが、目の前に拡がるある意味地獄絵図のような料理に顔を引き吊らせていた。
クーからかつて聞いていた通りの斬新かつ神秘的で独創性に溢れたジュリの料理は、キョーコが以前先輩からご馳走になったマウイオムライスに勝るとも劣らない味と食感の群れであった…。
翌日。
朝早くから起き出したキョーコは、昨夜知り合ったばかりのふくよかなメイド、カリナとすっかり意気投合して朝食を作り、ヒズリ夫妻を迎え入れた。
《…そうだキョーコ。
正式に契約を結ぶ事になった訳だし、撮影が始まれば長期でアメリカ暮らしだよな?
留学の話はどうするんだ?》
50人前のベーコンとスクランブルエッグを口に運びながらクーが訊くと、キョーコは心が決まったのか、ハッキリと決意を口にした。
《はい、こちらでするべき事も出来ましたし、本場で演技の勉強もする機会に恵まれそうですし…。
学校の勉強はより視野の拡がったものが出来そうなので、思いきって留学しようと思います。
先立つ物に関しましても奨学制度を利用出来そうですから、その辺は問題ないと…。》
《よし決まりだな!!
留学先は追々詰めるとして、ホームステイはうちだ!!
早速ボスに連絡するからな!?》
ニコニコしながら高らかにクーが宣言して立ち上がると、ジュリも賛同した。
日本が真夜中であるとキョーコが慌てて制しても、メールだから心配要らないと一蹴されて、ヒズリ夫妻を止められる者はいなかった…。
それから帰国するまでの数日間、怒涛の親子ラブラブごっこが繰り広げられた。
クオン少年に化けたキョーコにジュリが号泣したり、変装させたキョーコをクーがジェレミーのいる撮影所に連れて行ってエキストラ出演させたり、ドレスアップさせられて友人のパーティーに引っ張り出されたり…。
散々連れ回されたキョーコが帰国の飛行機に乗った途端、離陸を待たずに眠り始め、機内食を一度も口にすることなく眠り続け、成田に到着してキャビンアテンダントに揺り起こされるまで起きられなかったのは仕方のない事だったと言える。
ちまちまだらだら書いてましたので更新が遅れました。
さ~、次は久々の事務所で一騒動!?