「…何て事言うんですか。
…そりゃ俺だって堂々と公表したいです!!
でもそれはキョーコの意思を無視しない形で、が最優先なんです。」


本音と理性が一緒になった蓮の言葉に、ローリィはばぁか、と嘲笑って見せた。

「そんな事言ってたらいつになっても公表なんざ出来ねぇよ。
最上君の事だ、どうせ“私なんかが敦賀さんの彼女だなんておこがましすぎます、せめてもう少し私が成長出来るまで伏せて下さい、でないとファンの女の子達に抹殺されます”とか言ってんだろうが。」


瞬間的に蓮は身体を強張らせた。

もしや自分のマンションに盗聴器か何か仕掛けてあるんじゃないかと思えるほど、ローリィは一言一句違わずキョーコの言葉を言ってのけたのだ。


「なっ…!!」


「…図星だろう。
…変な顔してんじゃねぇ、俺は盗聴するほど馬鹿じゃねぇぞ?」


さすがは運と勘の良さで人生を乗り切ってきたと豪語するだけの事はある。

蓮の顔を見ただけでその考えすら見抜いてみせた。


「んなもんは言っちまえばこっちのもんだ。
後の事は後になってから考えりゃいい。
…そうだ、条件によっちゃおれが悪者になってやってもいいぞぉ~♪」


明らかな悪巧み顔をしながらにんまり笑うローリィに嫌な予感を覚えつつも、キョーコとの仲を公表して砂糖に群がる蟻の如く現れ出でる馬の骨を何とか撃退したい欲望に勝てる蓮ではなかった。


「…何ですか条件って。」

「お?乗る気あんだな♪
なぁに、大したことじゃねぇよ。
記者会見を俺に仕切らせろ、それだけだ。」


あまりにも予想外に控え目な条件に裏があるんじゃないかと疑いかけた蓮だったが、そこまで言ってくれるならとローリィの提案に乗ることにしたのだった。


…後々もの凄く後悔する羽目になるのはお約束だが。



それから1週間後。


事務所発表の元、敦賀 蓮と京子の交際宣言が報道各社にファックスされ、全国的に騒然となった。


「な、何で!?
蓮さん、何か知ってます!?」


「…この前社長が電波に乗せてラブミー部員の見合い話を募集しただろう?
キョーコは俺の恋人だから、そんなの必要ないって社長に報告しておいたんだけど…口止めが足りなかったかも…。」


「なっ、何でそんな事したんですか!!
記者会見の予定まで組まれてますよ!?」


突然送られてきた事務所からのメールに慌てふためくキョーコに、蓮は捨てられた子犬の様な目でしゅんとしてみせた。


「…キョーコは俺との事がバレるの、そんなに厭なの…?
まさか…俺の事…棄てるの?」


「っ!!そんなっ!!
す…棄てられるなら…わっ、私の…方なんじゃないですか!?
嫌だけど…れっ、蓮さんにはわっ、私なんかよりもっとお似合いの女(ヒト)が…。」


その先を聞きたくなくて、蓮はキョーコの腕を引き、柔らかなその唇を自らのそれで塞いだ。


「ん…は…ぁん…っ。」


抱き寄せて思いの丈をぶつけるように激しく貪る様に接吻ると、キョーコは息継ぎが難しかったのか、ぐったりと蓮にもたれかかった。


「他の誰が何て言おうが、俺はキョーコを離さないし、離せない。
他のひとなんか要らないし、君さえいれば何処へ行ったっていいからね。
向こうに帰って一からやり直したって構わないよ。」


ただ向こうで君にも一からやり直してもらわなきゃならなくなるのは辛いけどね、と付け足して蓮は笑ってみせた。


「…離さないでいてくれるんですね。」


「嫌だって言っても離せないな。
海が割れようが天地が引っくり返ろうが、俺の気持ちは変わらないよ。」


蓮の腕の中で身動ぎしたキョーコが躊躇いなく広い背中に手を回し、力を込めてしがみついた。


「…だったらいいです。
私も離れたくないですから。
蓮さんの…久遠さんのやりたいようにして下さい。
アメリカに行くなら着いて行きますから。」


「…ありがとうキョーコ。
君を心から愛してるよ…。」



そうして2人は社と椹から呼び出しの電話が掛かって来るまでお互いを激しく求めあったのだった。



予定されていた時間より1時間遅れて始まった記者会見では、これ以上無い程蕩けた満面の笑みを浮かべる蓮と、僅かに見せる疲れに隠しきれない気だるげな色香と艶かしさを漂わせた京子が並んで座っていた。


2人を不釣り合いだと言う者も居ないわけではなかったが、その後も仲睦まじい様子に結局文句を言う者も消え去り。


数年の後、2人は互いの左手薬指に揃いの指輪を着ける事になる。




「よぉっし!!
記者会見だぁっ!!
約束通り仕切らせて貰うぞ~!!」


「…は?
仕切るってあの時だけだった筈…。」


「何言ってやがる!!
お前らの愛の記者会見は、お前らが引退するまで妊娠・出産・お宮参りに七五三に成人式まで全~部俺が仕切るんだ!!
楽しいなぁ~♪」


「「~~~やめてくださいっっ!!」」









END







なんか最後はぶっちぎりな気がしなくもないんですが、これで完結とさせていただきます。

リクを下さったケロちゃんさん、こんなんでよろしかったでしょうかね~。

いいネタを頂いて楽しく書かせて頂きました♪

ご満足頂けるかは甚だ疑問ですが、いりるは逃げますっ!!

書き逃げです!!

お持ち帰り…します?
長いけど。