午前8時20分。
無遅刻キングの名は伊達ではない青年が、所属事務所の社長邸の門の前に立っていた。
「…おはようございます、社長。
俺のスケジュールを無理矢理空けた理由を伺いたいんですが。
…社さんから、苦情は家で聞くと社長自ら仰言ったそうですし…。」
キラキラした笑顔をむけられても全く動じない所は流石ローリィ宝田である。
「ああ、そうだな、蓮。
今日は楽しいイベントに参加してもらいたい!」
実に楽しそうなローリィ社長の態度に嫌な予感を感じた蓮は、内容を問わずに黙ったまま一礼してその場を去ろうとした。
「こらこらっ!
俺の話も聞かないうちに逃げるなっつーの!」
「…嫌ですよ。
そういう顔をしている時の社長は、たいてい人で遊ぶんですから。」
「中身聞いてから断りゃいいのになあ。
…ホントにやらない?」
「…やりませんよ。」
にんまり顔のローリィと、苦虫噛み潰したような顔をした蓮。
呆れ返る程の両極端な表情を浮かべる2人だった。
「仕方ない、他を当たるか。
最上君演じるサラ・ヒズリの初デート設定の相手役…。」
「俺がやりますっ!」
「ほら、素直に聞きゃいいだろ?
抵抗するだけ損なんだよ。」
ローリィお釈迦さまの掌の上でころころと転がされる猿の気分になった蓮だった。
結局ローリィの指示通り、敦賀 蓮と知られないような、しかもキョーコ演じるサラと並んで遜色ない美丈夫青年を、蓮は作り上げたのだった。
…ローリィの陰謀で、Miss Jerry Woodsが、久遠に戻していたのだが。
「お、そろそろできたかな?」
女性に比べて男性の支度は早い。
髪の色を変えても、キョーコの方が先に準備を始めていてもやはり時間が掛かるのはキョーコの方だ。
しかも初デートの設定である以上、気合いの入ったコーディネートは間違いない。
ローリィの判断で、結局蓮は先に事務所の地下駐車場で待機することになったのだった。
蓮と顔を合わせる事なく、マリアの采配で気合いの入ったコーディネートをされたキョーコは、ローリィの審査を受けていた。
「いかがですか、お祖父様?
私達の会心の出来ですわ!
ねぇ、皆さんっ!」
「「「はいっ!お嬢様!」」」
キョーコを磨き上げたスタッフは、満足そうに頷いた。
「ご苦労だったな、お疲れさん。
出張料金に気持ちを上乗せさせてもらうよ。」
満足していると言うローリィの態度に、エステティックのスタッフが笑顔で答えた。
「こちらこそいい仕事をさせていただきありがとうございました!」
スタッフ全員がにこやかに一礼し、部屋から出て行くと、ローリィはキョーコをもう一度上から下まで見遣り、うんうん、と頷いた。
「上出来だな。
ご苦労さん、マリア。 じゃあ最上君を送って来るか。」
早速部屋の外へ足を向けようとするローリィを、キョーコは慌てて呼び止めた。
「しゃ、社長さんっ。
私まだ、今日の課題について何も伺っておりません!」
「心配はいらん。
今日は君には相手役が付く。
内容はその人物に聞けとさ。
クーからの伝言だ。」
ローリィからのその言葉に、キョーコは渋々頷き、再び歩き出したローリィの後に続いたのだった。
蓮が事務所に着いて15分程経った頃、蓮の携帯が鳴り出した。
相手は社長だ。
「…はい。」
『おう、待たせたな。
突然だが場所を変えるぞ?』
「…は?」
『渋谷だ。
ワンコの銅像前に落っことして来た。
早く来い。
急がないと昨日よりもドレスアップしてるからナンパ男に掠われるぞ~。』
完全に遊ばれている2人であった。
「何て事してるんですかっ!!
せめてボディガードを俺が行くまで付けておいて下さい!!」
『あ~。
そりゃ無理だ。
俺からはもう見えない。
ま、とにかく頑張れよ~♪』
ぷつっ。
言うことだけ言って、ローリィは電話を切ってしまった。
「…全くっ!!」
蓮は携帯を助手席に放り投げると、急いで車を発進させたのだった。
加筆修正、完了です!
遅くなって珵
無遅刻キングの名は伊達ではない青年が、所属事務所の社長邸の門の前に立っていた。
「…おはようございます、社長。
俺のスケジュールを無理矢理空けた理由を伺いたいんですが。
…社さんから、苦情は家で聞くと社長自ら仰言ったそうですし…。」
キラキラした笑顔をむけられても全く動じない所は流石ローリィ宝田である。
「ああ、そうだな、蓮。
今日は楽しいイベントに参加してもらいたい!」
実に楽しそうなローリィ社長の態度に嫌な予感を感じた蓮は、内容を問わずに黙ったまま一礼してその場を去ろうとした。
「こらこらっ!
俺の話も聞かないうちに逃げるなっつーの!」
「…嫌ですよ。
そういう顔をしている時の社長は、たいてい人で遊ぶんですから。」
「中身聞いてから断りゃいいのになあ。
…ホントにやらない?」
「…やりませんよ。」
にんまり顔のローリィと、苦虫噛み潰したような顔をした蓮。
呆れ返る程の両極端な表情を浮かべる2人だった。
「仕方ない、他を当たるか。
最上君演じるサラ・ヒズリの初デート設定の相手役…。」
「俺がやりますっ!」
「ほら、素直に聞きゃいいだろ?
抵抗するだけ損なんだよ。」
ローリィお釈迦さまの掌の上でころころと転がされる猿の気分になった蓮だった。
結局ローリィの指示通り、敦賀 蓮と知られないような、しかもキョーコ演じるサラと並んで遜色ない美丈夫青年を、蓮は作り上げたのだった。
…ローリィの陰謀で、Miss Jerry Woodsが、久遠に戻していたのだが。
「お、そろそろできたかな?」
女性に比べて男性の支度は早い。
髪の色を変えても、キョーコの方が先に準備を始めていてもやはり時間が掛かるのはキョーコの方だ。
しかも初デートの設定である以上、気合いの入ったコーディネートは間違いない。
ローリィの判断で、結局蓮は先に事務所の地下駐車場で待機することになったのだった。
蓮と顔を合わせる事なく、マリアの采配で気合いの入ったコーディネートをされたキョーコは、ローリィの審査を受けていた。
「いかがですか、お祖父様?
私達の会心の出来ですわ!
ねぇ、皆さんっ!」
「「「はいっ!お嬢様!」」」
キョーコを磨き上げたスタッフは、満足そうに頷いた。
「ご苦労だったな、お疲れさん。
出張料金に気持ちを上乗せさせてもらうよ。」
満足していると言うローリィの態度に、エステティックのスタッフが笑顔で答えた。
「こちらこそいい仕事をさせていただきありがとうございました!」
スタッフ全員がにこやかに一礼し、部屋から出て行くと、ローリィはキョーコをもう一度上から下まで見遣り、うんうん、と頷いた。
「上出来だな。
ご苦労さん、マリア。 じゃあ最上君を送って来るか。」
早速部屋の外へ足を向けようとするローリィを、キョーコは慌てて呼び止めた。
「しゃ、社長さんっ。
私まだ、今日の課題について何も伺っておりません!」
「心配はいらん。
今日は君には相手役が付く。
内容はその人物に聞けとさ。
クーからの伝言だ。」
ローリィからのその言葉に、キョーコは渋々頷き、再び歩き出したローリィの後に続いたのだった。
蓮が事務所に着いて15分程経った頃、蓮の携帯が鳴り出した。
相手は社長だ。
「…はい。」
『おう、待たせたな。
突然だが場所を変えるぞ?』
「…は?」
『渋谷だ。
ワンコの銅像前に落っことして来た。
早く来い。
急がないと昨日よりもドレスアップしてるからナンパ男に掠われるぞ~。』
完全に遊ばれている2人であった。
「何て事してるんですかっ!!
せめてボディガードを俺が行くまで付けておいて下さい!!」
『あ~。
そりゃ無理だ。
俺からはもう見えない。
ま、とにかく頑張れよ~♪』
ぷつっ。
言うことだけ言って、ローリィは電話を切ってしまった。
「…全くっ!!」
蓮は携帯を助手席に放り投げると、急いで車を発進させたのだった。
加筆修正、完了です!
遅くなって珵