「事務所で明日のスケジュールを確認したら、そのままお買い物に行くつもりなんですけど…夕食のご希望はありませんか?」


最上さんの作る食事は、食べる事自体に無頓着な俺が毎日食べたいと思えるものばかりだ。


「なんでも美味しいからなぁ…最上さんの料理は。
最上さんが食べたい物で構わないよ。」


そう返して、彼女との短い逢瀬を味わっていると、真っ直ぐな廊下の向こうから社さんが小走りにやってくるのが見えた。


「あ~、お待たせ!
どうしたんだよ、こんな所で…。」


俺の身体に隠れて、最上さんが社さんの位置からは見えなかったらしい。


「社さん、つい今しがた最上さんに会ったんですけど、事務所に一人で、それも電車で戻るところだったんです。
…この格好で。
まずいというか、危険でしょう?」


そう言いながら俺が身体をずらすと、社さんの視界にも最上さんが入ったらしい。

半歩後ずさりして赤面した。


「…うぇぇっっ!?
キョ、キョーコちゃんなの?
…あ~。確かに一人で電車は危険だなぁ、その格好は。」


「すみませんが社さん、今日の撮影あと1時間くらいで終わりでしたよね。
  最上さんを事務所に送ってもらえますか?
俺は仕事が済みしだい事務所に戻りますから。」


「分かったよ。
俺は一足先に事務所に戻って、明日のスケジュールの最終確認しておくから。
じゃあ行こうか、キョーコちゃん。」


俺と社さんに挟まれ、一気に話が決まってしまった最上さんは、わたわたし始めた。


「え!?
でもですね、私一人でも平気ですけど!?
  ていうか危険ってなんですかぁ!?」


「「却下。」」


俺と社さん、二人声が揃う。


「さっきも言ったよ。
それ、変装じゃなくて変身だから。
完全に不埒者に狙われる。」


「いつもの制服だって可愛いのに、そんな美人さんじゃあ狙って下さいって言ってるのと一緒。
キョーコちゃんはまだマネージャーがいないんだから、尚更気をつけないと。
じゃあ蓮、お前はスタジオに行ってくれ。
俺、事務所で待ってるからな。」


「分かりました。
じゃあ最上さん、また後でね。」


大事な話がある。

君を手に入れるために。

君が復讐なんて止めたって知った以上、不破を断ち切って棄てたなら、俺との未来を考えて欲しい。

…絶対に逃がさないよ?













キョーコちゃん包囲網、狭められつつあります。
次回こそは告白ターイム!!