「京子ちゃん、田村だけど、いいかい?」


ノックの音と共に、ブリッジロックのマネージャー、田村がドアの向こうから声を掛けてきた。


「どうぞ。
着替えてませんから大丈夫です。」


「失礼するね…っと、お客様が居たんだね…。
…京子ちゃん?」


「はい、どうかなさいましたか?
田村さん。」


唖然呆然な田村に、キョーコはもう一度声を掛ける。


「…田村さん、あの、ご気分でもお悪いのでは…。」


「…!ああ、いや、大丈夫だよ。
慎一と雄生がね、光連れてメイク室に移動したから、京子ちゃんに知らせてくれってさ。」


変な事頼むよな、と言う田村マネージャーに、いきさつと今朝の出来事をキョーコが説明すると、田村は得心がいったように頷いた。


「確かに今フリーズされたら収録に響くよな。
それくらい京子ちゃんのその姿は光にはインパクトあるからね。
ま、あいつらに頼まれた事は果たしたから、俺は行くね。」


「お手数をお掛けしました。
ありがとうございました、田村さん。」


いつもながらの丁寧な挨拶に、うんうん頷きながら、田村は控室から出て行った。



「では行きましょうか。
プロデューサーが居なくなる前に席は確保したいですから。」


振り返ったサラスタイルのキョーコの言葉に頷くと、一同は元のスタジオへと足を向けたのだった。



「おはようございます。
本日もよろしくお願いします、プロデューサー。」


「おう、よろしくな…って、あれ?」


レギュラーとして着ぐるみに入るようになって暫くは口も碌にきいてはくれなかったプロデューサーだが、坊のコーナーまで作ってくれた最近は、和やかに挨拶出来るまでに関係も回復していた。


「このような出で立ちで申し訳ありません。
改めまして、おはようございます。
本日もよろしくお願いします。」


「きっ、君は京子君か!?」


素っ頓狂な上擦り声のプロデューサーに、キョーコはまたかと内心思ったが、仕方のないことと諦め、手短に事情を説明した。


「…そういう訳で、先生ご夫妻と事務所の社長のお孫さんが飛び入り観覧希望なのですが、宜しいでしょうか。」


「ああ、3人くらい構わないさ。
そろそろリハーサルを始めるから、準備してきてくれ。」


「ありがとうございます。
それでは準備してきます。」


相変わらず綺麗にお辞儀をすると、遠巻きに見ていた3人に小走りに近付き、何か話してから控室に向かって歩いていくのを、プロデューサはじっと見送っていた。



(あんなに綺麗な娘だったんだっけ。
あれならあのままアシスタントに出てもらいたいくらいだなぁ…。
…っ!いやいや、それでは番組マスコット、“坊”を演れる人間がいない!
彼女が2人いたら…って、ありえない~!!
でも欲しい~!!)


……と、プロデューサーが悶えているのを、周りのスタッフは気持ち悪いものを見てしまったとばかりに遠巻きにしていた。









…日付、変わっちゃった。
公開収録、内容は…書こうか書くまいか。