約束の時間を前に、どうにかスケジュールを時間通りにこなし、キョーコと蓮は社長室前の廊下で落ち合うことができた。

 

じゃあ俺達は、とその場を後にしたお互いのマネージャー達の背中に感謝の言葉を掛け、二人は見合って頷き合い、深呼吸を一つしてからドアをノックした。

 

 

 

「社長、蓮です。

入ります。」

 

「おう、何だ急に会いたいだなんて。

…って最上くんも一緒か。」

 

二人一緒だった事で社長には用件に察しが着いたらしく、にったぁ~、と嫌~な笑みを浮かべる。

 

「何だ~♪

お前ら、遂に交際宣言する気になったのか?」

 

「いえ、婚約会見するので準備をお願いします。」

 

 

「………はあっ!?

恋人宣言すっ飛ばして結婚宣言かっ!?

どこをどうなったらそうなる!?」

 

愛の前には何があろうと賛成すると思っていたローリィの思わぬ発言に、二人は顔を見合わせた。

 

「…社長さんなら喜んで下さると思ってましたが…、いけませんか?」

 

不安げなキョーコの手を横から握ると、蓮はぐっと詰め寄った。

 

「愛のイベントに目がない社長のお言葉とも思えませんが、何故ですか?」

 

「決まっとるだろうが!

俺の楽しみが減るからだ!」


蓮もキョーコも開いた口が塞がらない。

 

「交際宣言からラブラブデート、二人だけの海外旅行!

イベントは山ほどあったというのに!

こっそり撮影してクーで遊んでやろうという俺の計画が…!」

 

(息子の恋路を隠し撮りされて、それをダシに遊ばれるハリウッドスターの父って…。)

 

二人は示し合わせた訳でも無いのに頭を抱えていた。

 

 

 

 

 

 

どう転んでも社長のお遊びに付き合わされるのは確実…。哀れ、キョーコちゃんを新たに加えるヒズリ一家。