大食い大会当日。
日曜日ということもあり、明人もいっしょに会場に入った。
「結構、人多いんやな。」
明人は周囲を見渡した。
そこには出場する選手の他、応援の人間もいるためかなりの人数である。
「まだ予選やしね。」
「そんなんや。」
「うん、この中の上位2名だけが本戦に出られるの。」
「だからって無理はするなよ。」
「わかってるって、できる範囲でがんばるから。」
真紀はニッコリ笑ったが、明人はやはり不安であった。
試合が始まって30分が経過した。
食べているのは豚まんで45分間でどれだけ食べられるかの勝負である。
最初は皆、快調に食べていたがさすがに30分を過ぎるとほとんどの人間は食べる手を止めていた。
食べ続けているのはわずか4、5人であった。
その中に真紀は入っていた。
現在は3位に位置しているがさすがに苦しそうである。
それでも食べる手は止まらない。
もう少しで予選通過なのだ。
「真紀!がんばれ!もうちょっとや!」
多少のわだかまりはあるが、ここまでがんばっている彼女を応援しないわけにはいかない。
明人は精一杯の声を出した。
その声が聞こえたのか、真紀は明人の方に視線を向け小さくうなずいた。
それから少しだけ真紀の食べるペースが上がった。
2位との差が縮まる。
残り時間あとわずかというところで個数が追いついた。
が、そのまま時間切れとなった。
わずかな差で真紀は敗れた。
「だいじょうぶか?」
「うん、平気。」
真紀は明るい表情を見せたが、無理をしているのはあきらかだった。
「あそこで休んでいこう。」
「うん。」
明人がベンチを示すと真紀は素直に従った。
やはり苦しいようだ。
「おしかったな。」
ベンチに座ると明人はあらためてねぎらいの言葉をかけた。
「ううん、精一杯やったし・・・・・・・・・・・・・」
「それに明人との約束破ってかなり無理してたから。」
「正直言うとちょっと苦しい。」
真紀はちょっとバツが悪そうな顔をした。
明人は小さく首を振ると
「もうええやん、済んだことやし。」
真紀の肩をやさしく抱いた。
「でもやっぱ悔しい。」
真紀はそう呟くと静かに泣き始めた。
明人は何も言わずただ真紀の頭を撫でていた。