真理子の告別式から3日後。


「明人、ごはんよ。」


結衣は明人の部屋をノックした。


「あっ、俺いらんから。」


「でもここ何日ろくに食べてないやん。」


「食欲ないねん。」


「そんなん体壊すよ。」


「頼む、1人にしといてくれ。」


「・・・・・・・・・・・・わかった。」


結衣は仕方なく明人の部屋から離れようとした。


入れ替わりに博が明人の部屋の前に立った。


「えっ、ちょっとお父さん!」


結衣は驚いて止めようとしたが、その前に博は部屋を開け放った。


「おい、いつまでそんなことしてるつもりじゃ、さっさと来て飯喰え!」


ベッドに体育座りの明人は視線だけを博に向けた。


その頬はこけ、目の下にはクマが出来ていた。


「ちっ、幽霊みたいな顔しやがって。」


博は舌打ちをするとベッドに近づき明人の腕をつかんだ。


「ほっといてくれ!」


その手を明人は振り払おうとした。


が、ロクに食事をとっていない明人はフラフラの状態で腕力で博にかなうはずはなかった。


明人はベッドから引きずりおろされた。


「お父さん無理はやめて!」


結衣は明人をかばおうとしたが


「うるさい!」


博は結衣をベッドに突き飛ばした。


「何すんねん!」


明人が怒りの目で博を睨んだ。


「お前がさっさと来て飯喰えへんからじゃ。」


博は明人の胸倉をつかんで立ち上がらせた。


「1人にしといてくれよ、おっちゃんなんかに俺の気持ちわかれへんやろ!」


「お前ひょっとして真理ちゃん死んだん自分のせいやと思ってるんか?」


その言葉に明人はビクッと体を震わせた。


博はやっぱりという顔をしながら


「気の毒やけど、真理ちゃんは死すべき運命やったんや。」


「どうしようもなかったんや。」


途端に真っ青だった明人の顔に血の気がさし博の胸倉をつかみ返した。


「そ、そんな言い方ないやんけ!」


「それやったらあんまりやん!」


「真理、何のために生まれてきてん!」


「たった17年しか生きてないねんぞ!」


「何で・・・・・・・・・・・・・・・」


「何で死ななあかんねん!」


明人は涙を流しながら、心の中の鬱屈を一気に爆発させた。


それは博にというよりも受け入れがたい真理子の死という現実に対する怒りであった。