結衣は明人をまっすぐに見つめると


「私が反対する理由なんてないやん。」


冷静な口調で話した。


「そう言うたらそうやけど・・・・・・・・」


明人は何となくおさまりが悪そうである。


そのまま2人とも黙り込んだ。


「あ、あのさ・・・・・・・・・」


重苦しい沈黙を嫌うように明人が口を開いた。


「俺と真理がつき合うようになったら結衣、智之とつき合うみたいな感じになるやろ。」


「もし結衣が嫌やったら俺から智之に言うよ。」


結衣はゆっくり首を振ると


「智之ってああ見えても結構やさしいのよ。」


「智之とやったらうまいことやっていけると思う。」


「そ、そっか・・・・・・・・・」


明人は意外そうな顔をした。


「何よ、その顔は?」


結衣が明人を睨む。


「別に何もちがうよ、ただ・・・・・・・・・」


「ただ何よ。」


「お前、無理してない?」


「無理って何よ、そっちこそ無理してないの?」


「俺は何も無理なんかしてない!」


「私も無理してない!」


「じゃあ、それでいい!」


明人は憤然と立ち上がり部屋を出ようとした。


「明人!」


それを結衣が呼び止めた。


「ごめん。」


「それからありがとう。」


明人はそれを聞くと顔を強張らせ


「あ、いや、俺の方こそごめん。」


「それと・・・・・・・・・・・」


「おやすみ。」


「おやすみ。」


互いにあいさつを交わすと明人は部屋を出て行った。


結衣はベッドに横になり頭からふとんをかぶった。


そうすると自然と涙がこぼれた。


結衣はこの涙の意味を深く考えないようにした。