11月22日。


この日、明人と結衣は16回目の誕生日を迎えた。


今年は日曜日と重なり、定休日の太平軒で誕生パーティーが開かれていた。


集まったのはもちろん仲良しのいつものメンバーである。


「遠慮せんと食べて行ってね。」


綾子が博お手製の料理を所狭しと並べて行った。


「うわっ、すっげぇ~ボリューム。」


皿に盛られた料理の多さに俊介が感嘆の声をあげた。


「ははは、うちはデカ盛りで有名な店やからな。」


「じゃんじゃん喰ってくれ!」


「いただきま~す。」


博の言葉に全員声をそろえて合掌した。


「ところでさぁ~・・・・・・・」


食べ始めてしばらくすると智之がふと思い出したように明人と結衣を見た。


「おんなじ日に生まれたってどっちが先なん?」


「そうそう、私もそれ気になっててん、双子でも一応上か下かあるもんね。」


真理子も智之の後に続いた。


だがそれを聞いた途端、明人と結衣の顔色が曇った。


「え、え、何、何かまずかった?」


突然の気まずい雰囲気に俊介がフォローを入れた。


明人は仕方なくいきさつを説明した。


「へぇ~そんな微妙なタイミングやったんや。」


「でもそれやったら常識的にはやっぱり明人がお兄ちゃんよね。」


真理子の言葉に明人はうれしそうにうなずきながら


「そうやろ、どう考えても俺が兄貴になるよな。」


「いやいや、そんな微妙なタイミングのときはどっちが上ってはっきり言われへんやん。」


「こんなときはしっかりしてる結衣がお姉ちゃんの方がええよ。」


智之がすかさず結衣の肩をもった。


「でしょ、でしょ、どう考えても私のほうが姉よね。」


「何でやねん!」


「何よ!」


「まあまあ、2人ともここは多数決ってことで。」


「ねぇ、加奈はどっちの意見?」


明人と結衣が睨み合うのを真理子が仲裁に入り加奈に話題を振った。


みんなの視線が一斉に加奈に注がれた。


「えーっと私は・・・・・・・・・・・・・」


「中立!」


「ってそんなんあかんやん!」


真理子が呆れると


「俺も加奈の意見に賛成!」


俊介が加奈の意見に同調した。


「そんな微妙なことはどっちでもええやん。」


「なっ、加奈。」


「うん。」


俊介が自分の意見に賛同してくれたのがうれしいのか加奈はにこやかな笑顔でうなずいた。


「何、2人あやしいわね。」


真理子が探るような目で俊介と加奈を見た。


このときから始まった俊介と加奈の関係がやがて自分たちにも影響を及ぼすとは明人も結衣も気づいていなかった。