結衣が明人を見送り、電車の中でホッと一息ついたとき


「見たよ、見たよ。」


「すっごいラブラブやん!」


結衣のクラスメート岩崎真理子と今井加奈がそばに寄って来た。


「ち、ちがうよ、あれは私のイトコ。」


結衣があわてて否定すると


「え~イトコとあんなふうにする?」


真理子が冷ややかな視線を結衣に向けた。


「ネクタイ直してるとこなんかどう見ても恋人同士に見えたし。」


加奈も尻馬に乗った。


結衣は顔を真っ赤にし


「だってずっといっしょで兄妹とおんなじやもん。」


「しょうがないやん!」


あまりの結衣の剣幕に真理子と加奈はたじろぎ


「そ、そんなむきにならんでもいいやん。」


「そうそう、ちょっとした言葉のあややから。」


「それやったらいいけど。」


結衣は気持ちを落ち着かせた。


だが次の真理子の一言は結衣を再びあわてさせた。


「ねぇ、ねぇ、イトコやったら紹介してよ。」


「えっ!な、何言うてんの?」


「だって結衣のイトコくんなかなかかっこよかったもん。」


加奈もすっかり乗り気だ。


「ちょ、ちょっと待ってよ、自分の身内紹介なんてできひんよ。」


「えっ~!」


真理子と加奈が同時に不満の声をあげた。


「じゃあ2人は自分の身内友達に紹介できる?」


結衣の反論に真理子と加奈は顔を見合わせ


「そう言われたら嫌かな?」


「う~んやっぱり引くよね。」


「でしょ、でしょ!」


結衣はわが意を得たりと2人にアピールした。


「じゃあイトコくんに友達連れて来てもらうってのはどう?」


真理子がちがうアイディアを出してきた。


「いいやん、いいやん、それ!」


加奈はすぐその意見に飛びついた。


「みんなでいっしょに遊ぶねんやったらいいでしょ。」


「それに結衣だってそろそろ彼氏欲しくない?」


真理子の目は真剣そのものだった。


結衣はその迫力に押され


「ま、まぁそう言われればそうかな?」


「じゃあOKよね、やったー!」


加奈がさっそく喜びの声をあげた。


真理子もニコニコしている。


結衣はそんな2人の様子を見ていると不安を覚えた。


明人に友達を紹介してなんて言えるのかどうか・・・・・・・・・・・