「見たぞ、見たぞ、見たぞ!」


明人が席につき、カバンをかけているとクラスメートの井上智之がニヤニヤしながら近寄って来た。


「はぁ?何をやねん?」


明人には何のことかさっぱりわからない。


「とぼけんでもええやんけ、電車下りる前彼女にネクタイ直してもろてたやろ。」


「えぇー、うっそ!」


素っ頓狂な声を出したのは同じくクラスメートの青木俊介だった。


明人はため息をつき


「あのな~・・・・・・・・」


説明しようとしたが


「どんな娘、どんな娘。」


「それがさぁ~めっちゃかわいい娘やってん。」


「マジで!」


「あの娘やったらアイドルできるで!」


「そんなレベルなん!」


「おお!そんな娘と朝からラブラブやで。」


「信じられへん、うらやまし過ぎるわ!」


智之と俊介は2人で盛り上がっていた。


明人はもう1度ため息をつき


「聞く気ないねんやったら、説明せえへんぞ。」


智之と俊介は一斉に明人を見


「聞く、聞く!」


「プロフィール教えて!」


2人して鼻息を荒くした。


明人は呆れながら


「あれは俺のイトコ。」


「はぁ?」


今度は智之と俊介が首をかしげた。


「イトコといっしょに通学するか?」


智之が疑問を投げかけると


「せえへん、せえへん。」


俊介が手を振って否定した。


「おまけにピッタリ寄り添ってネクタイ直すか?」


「ありえへん、ありえへん!」


2人の態度に明人はムッとし


「じゃあ、勝手にそう思っとけよ。」


そっぽを向いた。