15歳 初夏
「やれやれ、何とか間に合うた。」
明人は電車に乗り込みホッと息をついた。
「ちょっとー!他人事みたいに言わんといて!」
「誰のせいで電車の時間ギリギリになったと思ってんのよ。」
結衣は憤まんやる方ないといった様子だ。
「うるさいなー!それやったら俺のことほっといて1人で行ったらええやんけ!」
「そんなわけにいかへんでしょ。」
「なんでやねん?」
「明人1人やったら毎日遅刻やんか!そんなんで呼び出されたらそれこそおばさんに合わせる顔ないわ。」
「あーそうですか。」
明人は最近、母や伯母以上に口うるさくなってきた結衣に閉口気味だった。
現在高校1年生の2人は私立の男子校と女子校に進学していた。
だがそれぞれの学校は隣の駅なので、毎朝結衣がガミガミ言いながら明人を引っ張って行っていた。
「もう着くよ、ちゃんと居眠りせんと授業受けるのよ。」
「うるさいなー!お前はオカンか!」
「そんなようなもんやん、私はおばさんに頼まれてんから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ほら、ネクタイ歪んでる、ウーしなさい。」
結衣は強引に明人に上を向かせ制服のネクタイを直した。
「これでよし!いってらっしゃい!」
電車の扉が開くと同時に結衣は明人の背中を叩いた。