3月末日、関西国際空港。


「じゃあ、父ちゃん、母ちゃん、元気で。」


「ああ、お前もしっかり勉強するねんぞ。」


「うん、わかってる。」


明人は父の言葉にしっかりとうなずいた。


「明人・・・・・・・」


直子は後は言葉が続かず涙を流しながら明人の手を握った。


「泣くことないやん、半年に一回は戻ってこれるって父ちゃん言うてるし・・・・・・・・」


明人は戸惑いつつも泣きじゃくる母をいたわった。


「直子、明人のことは心配せんでいいから。」


綾子は目を潤ませながら直子をなぐさめた。


「わかってるお姉ちゃん、明人のことくれぐれもお願いします。」


直子は涙を拭い、博と綾子に向って頭を下げた。


正人は両手で博の手を握り


「明人のこと頼む!」


「わかってる、第一明人はうちの大事な後継ぎやしな。」


博はしっかりと正人の手を握り返した。


最後に直子は大粒の涙を流している結衣を抱きよせ耳元で


「明人のことお願い。」


「あの子、案外気使いやからお姉ちゃんに弱い面見せたりせえへんと思うから。」


「結衣にやったら全部さらけ出すと思うから。」


「だからときどきあの子のこと甘えさせてやってね。」


結衣は小さくうなずき


「うん、わかってる。」


「明人のことちゃんと面倒みるから。」


「だからおばさん、安心して。」


直子の耳元でつぶやいた。


直子は無言のまま何度もうなずいた。


「じゃあ、そろそろ行こか、直子。」


正人は名残惜しそうにしている直子の肩を抱き、ゲートをくぐった。


その様子を明人が潤んだ目で見守っていた。


「泣きたかったらおもいっきり泣いてもええねんで。」


いつの間にか結衣が寄り添うように立っていた。


「アホか、ガキじゃあるまいし。」


明人は口を尖らせた。


(そういうところが子供やの。)


結衣は心の中でつぶやいた。