14歳 新春
「ちょっと~なに人のおかずとってんのよ。」
「ずっと残してるから食べたったんや。」
「大事に取っておいたの!」
「それやったらさっさと食べろ。」
「人の物とっといて何勝手なこと言うてんのよ。」
今日も太平軒では明人と結衣の口喧嘩が始まっていた。
「よう毎日飽きんと喧嘩できるな~」
博が呆れて逆に感心していた。
「ちょっとあなた感心してんと注意してよ。」
そんな博を綾子がたしなめた。
「もうあんたらええかげんにしなさい。」
「今年から中3になるのにいつまでも小学生みたいな喧嘩して。」
見かねた直子が明人と結衣を注意した。
ちょうどその時、正人が帰ってきた。
「あっ、おかえりなさい。」
直子が声をかけると
「ああ、ただいま。」
正人は浮かない様子だった。
「どうしたん?何かあったん?」
いつもとはちがう夫の様子に直子はただならないものを感じた。
「うん、まあな。」
正人は奥歯に物の挟まったような言い方をした。
「とにかく座れよ。」
博は正人に席を勧めた。
綾子はグラスを渡し正人にビールを注いでやった。
正人は注がれたビールを一息に飲み干した。
「っで、どないしたんや。」
博はあらためて正人を見た。
「実はな・・・・・・・・・」
正人はゆっくりと話し始めた。
その様子を博、綾子、直子はもちろん、先ほどまで派手に口喧嘩をしていた明人と結衣も心配そうな顔で見守っていた。