「私のせいで明人が、明人が・・・・・・・・・」
太平軒の店内で結衣の泣き声が響いていた。
「だいじょうぶやって、そんな重症やったら救急車で運ばれてたはずや。」
「そうやん、自分の足で歩いて病院行ったぐらいやからだいじょうぶよ。」
博と綾子は娘をなぐさめていた。
教師たちは明人をすぐさま近くの病院に連れていった。
結衣も付き添おうとしたが、事件の詳細を親たちに知らせるため教師に送られ帰ってきた。
入れ違いに直子が病院に飛んで行った。
「でも、でも血いっぱい出てたし・・・・・・・・・・」
ヒック、ヒックと時々しゃくりあげながら結衣は言葉を絞り出した。
「血は中に溜まった方が重傷やねん、外に出てるからだいじょうぶ。」
「でも・・・・・・・・・・」
博の言葉に結衣が反論しようとしたとき店の扉が開いた。
頭に包帯を巻き、顔に大きなバンソウコウをつけた明人であった。
「明人ー!」
結衣はおもわず叫んだ。
「何やねん、大きい声出すなや!」
「2階行っとく。」
明人はそう言うと2階への階段を昇って行った。
「明人ー!」
結衣はその後を追いかけた。
「あの様子やったらだいじょうぶそうやな?」
「どうやのん、直子?」
2人の質問に直子はうなずいて
「CTとレントゲンはぜんぜん異常なかったから。」
「おでこ擦りむいたんと口の中切れてただけで済んだの。」
「鼻血はもう止まってるし。」
「そうか、良かった。」
博と綾子はほっと大きなため息をついた。