「結衣、いっしょに帰ろう!」


放課後、結衣の周囲に仲の良い女の子たちが集まってきた。


結衣はいわゆる美少女である。


しかしそんなことを少しも鼻にかけることはなく、誰にでも優しく接した。


明人以外には・・・・・・・・


そのためクラスの中では人気者であった。


いや、隣の明人のいるクラスでも結衣の人気は高かった。


明人には面白くない話であるが・・・・・・・・


結衣たち女子の一団が校門を出てしばらく歩いていると道の真ん中で中学生3人が何やらやっていた。


近づいてみると子犬を3人でいじめていたのだ。


棒でつついたり、足で蹴飛ばしてみたり。


しかし誰も中学生が怖いのか見て見ないふりをしていた。


それが正義感の強い結衣には許せなかった。


彼女は猛然と中学生たちに近づくとその輪の中にいる子犬を抱きかかえた。


「コラァ、何するんじゃ!」


1人が怒鳴り声をあげた。


だが結衣はひるまなかった。


「そっちこそこんな子犬いじめて何が楽しいのよ!」


キッ!と強い目で3人を睨みつけた。


「何じゃこのガキ!」


「俺らのおもちゃ勝手に取るな!」


「こっち貸せー!」


3人は口々に罵り結衣の手から子犬を奪おうとした。


結衣は背中を向け3人の手から子犬を守った。


痺れを切らした1人が


「ほんだらお前代わりにどついたるわ!」


結衣の肩を持ち強引に振り向かせるとその顔に拳を振りおろそうとした。


結衣は目をつぶり歯を喰いしばった。


が、結衣の顔面に衝撃は来ず、代わりにドサッっという音が聞こえた。


結衣が目を開けると殴りかかってきた中学生が地面に倒れていた。


その腰には明人がしがみついていた。


結衣が殴られようとした瞬間、明人がその中学生に向かってタックルしたのだ。


「明人!」


「何、ボォーとしてんねん!」


「さっさとあっち行け!」


呆気にとられている結衣に明人が叫んだ。


「何さらすんじゃーこのガキ!」


叫ぶために上体を起こした明人の顔に中学生の拳が容赦なく振り下ろされた。


ガツッ!


鈍い音がし明人の体が道路の上に転がった。


その顔からは鼻血が噴き出していた。