「ぜんぜん良くない、ちゃんと答えてよ。」


晶は食い下がった。


「チッ!」


拳は舌打ちをし


「わかったよ。」


晶の方に向き直った。


が、拳はなかなか口を開かなかった。


「早よ、言いーな!」


しびれを切らした晶が急かした。


拳は言いづらそうにしていたが


「静也や。」


ぽつりとつぶやいた。


「静也がどうしたん?」


晶には意味がわからない。


拳は気持ちを落ち着けるようにし


「この前、偶然静也と会って。」


「あいつの家族、おやじさんだけやって。」


「あいつ家のこと全部自分でやってて。」


「おまけにそれでも勉強もちゃんとやってて。」


「そんなことぜんぜん見せんと当たり前って顔でやってて。」


「何かあいつ大人やなって。」


「空手できることであいつと張り合おうとしてた自分がめっちゃガキに思えて。」


「Hなことに興味あってもちゃんと理性で制御してるし。」


「そういうとこも何か俺ガキやなって・・・・・・・・・・・」


そのまま黙りこんだ。


晶は驚いていたが


「すごいやん、拳。」


「ちゃんとそういうこと考えてるんや。」


「見直した、えらい!」


拳の手を取り称賛した。


「べ、べつにそんなたいしたことちゃう。」


拳は照れ臭そうにつぶやいた。


「ううん、そんなことない、えらいよ。」


晶は拳の手をしっかり握りしめた。


「で、でもおまえ静也のこと好きやねんやろ。」


「えっ!」


拳の言葉に晶は一瞬詰まったが


「うん。」


しっかりとうなずいた。


拳はそれを見るとうなだれた。


「でも・・・・・・・・」


晶は続けた。


「拳も好き。」


「えっ!」


拳はびっくりして顔をあげた。


「前までは俺が俺がで人のことぜんぜん考えへんかったし。」


「他人のええとこ認めようとせえへんかったやん。」


「それに男がHなんは知ってるけど、あからさまにさわられたらやっぱり嫌やったもん。」


「でも今はちがう、拳ちゃんと大人になってる。」


「かっこいいよ。」


「だから拳のことも好き。」


「って、何やそれ!」


拳はおもわず声をあげた。


「だって好きなもんは好きやねんからしょうがないやん。」


「じゃあ、どっちが好きやねん。」


「それは・・・・・・・・・」


「それは・・・・・・・・・」


拳は生唾を飲み込んだ。


「これから決める、だって私らまだ中2やん。」


「何やそれ!」


拳はもう1度大きい声をあげた。