俺は必死だった。


元々得意だったパンチのコンビネーション、明日香から授けられたキックのコンビネーション、その両方を合わせたコンビネーション。


ありとあらゆる技を駆使し攻め続けたが、この大会を2連覇している玄武館のエース増永勝也の牙城が崩せない。


本戦は引き分けに終わり、今また決定的な差をつけることができず延長戦が時間切れを迎えようとしていた。


「それまで!」


延長戦が終わった。


判定はやはり引き分けだった。


かなり息があがりかけている俺に比べ、増永はまだまだ余裕の表情である。


そんな中、再延長戦が始まった。


今までどちらかといえば防戦気味だった増永が、再延長戦が始まった途端多彩な技を駆使し攻めかけてきた。


先ほどまでとは立場が逆になった。


俺は致命傷をもらわないよう防戦しながら、何とかワンツーパンチからローキックを返した。


しかしその単純なコンビネーションでさえ、スタミナがつきかけているため驚くほど切れが悪い。


増永は楽々と俺の攻撃をかいくぐり、ボディにパンチの連打を浴びせかけた。


俺は何とか組みつき、膝蹴りからクリンチに持っていきそのままもつれ合って倒れた。


起き上がるとき、沙希の顔が見えた。


彼女は辛そうに泣いていた。


それでも


「拓ー!がんばってー!」


必死に声援を送ってくれている。


俺は何とかその声援に応えたかった。


立ち上がると再び、ワンツーパンチからローキックのコンビネーションを放つ。


が、俺の単純な攻撃はすでに見切られていた。


ワンツーパンチを出すと増永は半歩下がってその攻撃をすかした。


俺はバランスを崩し前のめりになった。


その瞬間、残りの体力をすべて注ぎこみ超高速で前転した。


明日香直伝のあびせ蹴りを放ったのだ。


油断していた増永は一瞬反応が遅れた。


それでもギリギリで体を反らした。


俺の足先がかすりバランスを崩して尻もちをついたが、それだけではダメージにならない。


審判もただのスリップダウンと見たようだ。


増永は


「あぶない、あぶない。」


と言わんばかりの表情でゆっくり立ち上がろうとしたが、脚がもつれヨタヨタと場外の方にバランスを崩して行った。


そしてそこで再び尻もちをついた。


どうやら俺のかすった足先は増永の顎をとらえていたようだ。


そのため脳が揺らされ軽い脳震盪を起こしていた。


奇跡的な俺の勝利であった。