「イッツ!」


「だいじょうぶ?」


最初の約束通り、練習後4人でラーメンを食べに来ていた。


修は明日香のハイキックで口の中が切れているので食べにくそうである。


さすがの明日香も申し訳なさそうにしていた。


もちろん口の中だけではない。


鼻血は止まっているが、目の周囲も腫れ始めている。


「ところで明日香はだいじょうぶなん?」


沙希が心配そうに明日香を見た。


「うん、ぜんぜん平気、苦しかったんあのときだけやから。」


そう言うと豪快にラーメンをすすった。


「ところで・・・・・・・・」


修が思い出したようにしゃべり始めた。


「明日香の蹴りはすごいな。」


「聞いてたけどあそこまでとは思わへんかった。」


「ほんまよう練習してんな。」


「そ、そんなことないよ。」


面と向って褒められたので明日香は照れた。


「お世辞ちゃうで。」


「うちの道場でもあんなにモーション小さくて速く蹴れる人いてないよ。」


「マジで?」


明日香はかなりうれしそうだ。


「ああ、自信持ってええと思う。」


修ははっきりと言いきった。


「おかげで修の二枚目が台無しやけどな。」


俺は2人の親しげな会話についつい余計なことを口走ってしまった。


「修はボコボコになっても拓よりはだいぶ男前やから。」


明日香は険のある言い方で返してきた。


「そんなん言うてて、ほんまに腫れが引けへんかったらどうすんねん。」


いつの間にかむきになっていた。


「そのときは私が修の恋人になる。」


明日香の言ったその一言は俺を無茶苦茶に動揺させた。


「はぁ~何言うてんねん!」


「男同士やんけ!」


「そんなことできるわけないやろ!」


もはや自分を抑えることができない。


明日香はそんな俺をさらに挑発するように


「男同士で愛し合って何が悪い!」


「幸い、私の体は女やし。」


「拓には関係ない!」


修の手を握った。


「何でそうなんねん!」


俺は思わず立ち上がりテーブルを叩いていた。


その音は店内に響き渡り、周囲の注目を集めた。


「ちょっと、拓!」


「明日香もええかげんにしとけ。」


沙希と修がそれぞれなだめとりあえずこの場は収まった。