「コラァわれ!なに人の女に手ぇ出してるんじゃー!」
拳はいきなり静也の胸倉をつかみ前後に揺すった。
その拳の頭に晶の渾身の一撃が振り下ろされた。
「イッテーーーーーーーー!」
拳は痛みのあまりその辺りを転げ回った。
「静也に手出したら承知せえへんからね!」
晶は怒りの言葉を拳に投げかけ、静也はそれを呆気に取られ眺めていた。
拳は頭をさすりながら起き上ると
「いきなり殴ることないやろ。」
「そっちがいきなり静也につかみかかったからやろ!」
晶はふんまんやる方ないといった表情である。
「何やねん、静也、静也って・・・・・・・・」
拳は言いながら遠い昔、同じような場面で同じようなフレーズを聞いたような気がした。
そして・・・・・・・・・・・・・
「あーーーーーー!」
拳はひときわ大きな声を出し
「お前、泣き虫の静也やんけ!」
「なんでここにいてるねん!」
静也に驚きの視線を向けた。
かつて拳と静也は同じ幼稚園でおとなしい静也を毎日のように拳が泣かせていた。
そのたびに晶が飛んできて拳を撃退していた。
そのときに聞いたフレーズが
「静也に手出したら承知せえへんからね!」
だった。
静也も拳の存在を思い出したようで
「晶の彼氏って拳のことやったん?」
拳はそれを聞くと先ほどとは一転し
「何やお前ようわかってるやん!」
穏やかな表情を見せた。
「ってそんなわけないやん、私に彼氏なんかいてへんよ、こいつが勝手に噂広めてるだけ!」
晶はキッと拳を睨みつけた。