晶はそんな相手の心の隙を突き、腕ではなく小指を持ってへし折った。


「ギャーーーーーーーー!」


相手の悲鳴と共に腕を外し、そのまま体勢を入れ替えると今度は腕十字で肘をへし折った。


後は相手の上に馬乗りになり、顔の原形がわからなくなるまで拳を振りおろした。


さすがにやり過ぎではあったが、原因が原因だけに警察沙汰にはならなかった。


それ以来、学校で晶に喧嘩を売る生徒はいなくなった。


しかし晶がその力を自分のために使うことはない。


常に弱い者を助けるためだけに使っていた。


今回も幼なじみの静也が他の男子生徒に転ばされ小突かれていたのを助けたのだ。


そんな静也は晶とはまったくの正反対で、読書が趣味のその名の通り物静かでおとなしい少年であった。


幼稚園時代は今回のようにいじめられているのをよく晶に助けてもらっていた。


しかし小学校に上がりクラスがちがってくると人気者の晶は男女問わず多くの友達に囲まれ、無口で引っ込み思案な静也とは自然と距離がひらいていった。


それは学年が上がるとますます顕著になり、中学校に上がる頃にはほとんど口をきくこともなくなっていた。


だが今日助けてくれた晶は幼稚園の頃と変わることなく静也のことを名前で呼んでくれた。


静也はそのことに驚き、またうれしくもあった。