静也のフルネームは藤谷 静也。


少女の名は沢村 晶(あきら)、共に中学2年生。


2人は幼稚園の頃からの幼なじみである。


といっても2人が言葉を交わしたのは実に数年ぶりのことであった。


晶は中学2年生ながら、160㎝を超えるスラリとした肢体に栗色のショートヘア、潤いのある大きな瞳、整った鼻筋、小さく引き締まった薄紅色の唇。


美少女モデルを彷彿とさせる外見であるが、中身は男勝りどころか男顔負けの暴れ者である。


小さい頃から格闘技が大好きで、他のことには見向きもせず空手、柔道に没頭した。


それだけでなく自身でもさまざまな格闘技を研究していた。


女の子は小学校高学年になると体力差から男子に喧嘩で勝てなくなるものだが晶はちがった。


長年の格闘技経験と持ち前の身体能力の高さで男子との体力差を埋め、けっして負けることはなかった。


そしてもっとも凄まじいのはその性格である。


中1の時、後輩からカツアゲをしている柔道部の3年生3人に注意し喧嘩になった。


晶はそれでも臆することなく、電光石火の急所蹴りで瞬く間に2人を戦闘不能に陥れた。


残る1人はキックをガードし組みついてきた。


晶は見事な背負い投げを見せたが、相手は倒れながら晶を寝技に引き込んだ。


素人男子なら例え寝技の攻防になってもおくれを取ることのない晶であったが、さすがに成人男性と変わらない体格の柔道有段者相手では分が悪かった。


晶は組み敷かれ、絞め技を決められてしまった。


体力差から相手の腕はビクとも動かない。


相手はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべていた。


美少女の晶が気を失えば、良からぬいたずらをしようと企んでいたのである。