バシッ!
少女のしなやかな脚が少年の側頭部をとらえた。
もんどりうって倒れた少年は蹴られた頭をおさえながら
「何も顔面蹴ることないやろう!」
少女はフンっと鼻を鳴らし
「弱い者イジメしてたくせに!」
「ちょっとおちょくってただけや。」
少年の抗議に少女は無言で睨みつけた。
それだけで少年はすくみ上がりそそくさと立ち去った。
少女は倒れているもう1人の少年に
「静也だいじょうぶ?」
手を差し伸べた。
静也と呼ばれた少年は驚いた様子で少女の顔を見、それから慌ててその手をつかんで立ち上がった。
少女は静也の制服やズボンについた汚れを払ってやりながら
「あいかわらずやねんから。」
「やられたらやり返さなあかんやん!」
「わかってる?」
「うん。」
静也は少女の叱咤に面目なさそうに頭をかいた。
「じゃあね。」
少女は片手をあげると風のように去っていった。
静也はそれをまぶしそうに見送った。