「それにしても3人とも強いのね。」
ゆかりは感心していた。
一回戦が終わった悟は瞳たちとご飯を食べようと食堂にやって来たが、そこに隆俊、勇、千尋がついて来た。
「一回戦は素人みたいなのも出場してるからですよ。」
「二回戦からはあんなうまいこといきません。」
隆俊が謙遜して答えた。
それでも美人に褒めてもらいまんざらでもない様子である。
それは勇も悟も同じであった。
ただ1人千尋だけは不機嫌だったが。
「でもトーナメントやからいずれ3人とも当たるんでしょ。」
瞳が当然のことを口にした。
「はい、俺と岩村さんが準決勝で、松本さんが決勝で当たります。」
悟が答えると
「そこまで勝ち上がられたらね。」
千尋が口をはさんだ。
「あ~ん?」
「何よ!」
悟と千尋がまた睨みあったので
「お前らええ加減にしとけ!」
隆俊が注意した。
「ふん!」
それを合図に2人はそっぽを向いた。
「それより、それより・・・・・・・・・」
気を利かせた勇が別の話題を提供した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「片桐!」
食堂を出て再び大会運営の仕事に戻ろうとした千尋を隆俊が呼び止めた。
「はい、何です?」
「お前今日おかしいぞ、やたら霧島に食ってかかって。」
千尋はムッとした表情で
「私はいつも通りです。」
そのまま行きかけた。
隆俊はそんな千尋の腕をつかみ、人気のない階段の踊り場に連れて行った。
「何するんですか?」
千尋は憤慨したが、隆俊は気にせず
「気持ちはわかるけど、ヤキモチ妬くのお前らしないぞ。」
ストレートに注意した。
「ヤキモチなんか妬いてません。」
千尋は毅然と答えたが隆俊は首を振って
「無理せんでええって。」
「お前が霧島のこと好きなん知ってるから。」
「だからってヤキモチ妬いてもお前自身が惨めなだけやぞ。」
それまで怒りの表情を見せていた千尋であったが
「そんなん自分でもわかってる、でも、でも・・・・・・・・・・」
それだけ言うとあとは涙をポロポロ流して泣き出した。
隆俊はいたたまれなくなり千尋を抱きしめた。
千尋は隆俊の胸で泣き続けた。