瞳は店の控え室でチケットを眺めながら考え込んでいた。


あの後、悟からチケットを渡され


「今度の日曜、空手の大会があるから応援に来てよ。」


とりあえず行くとは返事をしたが、正直迷っていた。


空手の大会となれば、当然あの千尋という女の子も来るだろう。


瞳も何となく顔を合わせづらいし、また自分が原因で悟と千尋が喧嘩をはじめるとそれこそ居場所がない。


「はぁ~」


瞳がため息をついたとき、手に持っているチケットを奪われた。


「何これ?」


瞳より2つ年下のホステス、下村ゆかりである。


なぜか瞳と馬が合い、プライベートでも遊んだりしていた。


「ちょっと桜!返してよ。」


店での源氏名は桜である。


「空手選手権?雪、こんなん興味あったっけ?」


「もう!返してって!」


怒った瞳がゆかりの手からチケットを奪い返した。


「そんな怒らんでもええやん!」


「あっ、わかった、ひょっとして新しい彼氏がそれに出場してるとか?」


その言葉に瞳は反応してしまった。


「えっ、マジ、図星?」


意外な瞳の反応にゆかりは驚いた。


「って、そんなわけないでしょ。」


「ちょっと知り合いが出てるだけよ。」


瞳は言い訳したが、その様子はいつも冷静な彼女とはかけ離れていた。


「ふ~ん、知り合いね~」


「そう言えば、最近付き合い悪いし・・・・・・・・・」


ゆかりはそう言うと冷ややかな目で瞳を見た。


「わかったわかった、ちゃんと説明するわよ。」


瞳はそう言うとしぶしぶ悟とのことを話した。


「へぇ~10歳下の高2!」


話を聞き終えたゆかりは素っ頓狂な声をあげた。


「ねぇ、ねぇ、もう頂いちゃったの?」


「はぁ?そんなわけないでしょ。」


「なんでなんで、その子雪にゾッコンなんでしょ。」


「まだ16よ、完璧に犯罪やん!」


「そんなん愛し合ってたら関係ないよ、私やったらもう今頃・・・・・・・・・・・」


瞳はヤレヤレといった表情だ。


ゆかりはそんな瞳にはお構いなしに


「それよりその空手大会、私も行ってあげるよ。」


「はあ?なんでそうなるのよ。」


「いいから、いいから。」


ゆかりは瞳の意見などは一切聞いていない。


「はぁ~」


瞳は最初よりもさらに大きなため息をついた。