その後、瞳と悟はときどき会うようになった。
昼ごはんを食べるだけのときもあれば、丸一日いっしょにいるときもあった。
あるとき悟が
「ねぇ、俺たちってどんな関係?」
冗談っぽく瞳に尋ねた。
瞳は真顔で
「そりゃもちろんただの友達じゃないわよ。」
「えっ、マジで!」
悟が喜びの表情を見せた。
「うん、私たち姉弟みたいなもんじゃない。」
「なんだ姉弟か。」
「何、姉弟じゃ嫌なの?」
「別にそう言うわけじゃないけど・・・・・・・・」
悟はそれ以上何も言わなかった。
これ以上恋愛感情を前面に出せば、瞳が会ってくれなくなりそうなのを感じていたからだ。
そのとき
「悟?」
喫茶店に入ってきた数人の女子高生のうちの1人が悟を見つけて声をかけてきた。
「何やってんの?」
悟は露骨に嫌な顔をして
「デートに決まってんだろ!」
「邪魔すんな!」
女の子は悟の態度にカチンときたのか
「あ~ん、あんたみたいな類人猿がそのお姉さんとデート?」
「笑かしてくれるわ!」
負けずに言い返した。
「ちょっと千尋、やめときーな。」
連れの女の子たちが千尋と呼ばれた少女をなだめていた。
「悟くんも悪いわよ。」
瞳も悟を戒めた。
「ほら行こ。」
連れの女の子たちに促され、千尋は悟たちとは離れた席に向かった。
そのときチラリと瞳を見た千尋の目には敵意が表れていた。
「彼女?」
千尋たちが離れた席に座ったのを確認した瞳は悟に質問した。
「んなわけないでしょ、ただの腐れ縁。」
「空手道場で小学校のときからいっしょやっただけ。」
悟はとんでもないという感じで答えた。
「ホンマにそれだけ?」
瞳が疑り深そうな目を向けると
「本気で怒りますよ。」
悟はムキになって声を荒げた。
「ゴメン、ゴメン。」
瞳は謝ったが、悟の気持ちはすぐには落ち着かなかった。