その後も正志は暴れたが、さすがに疲れてきたのかおとなしくなった。


とりあえず、おとなしくなった正志を端のテーブルに座らせ反対側に鉄二、妙子、和樹が。


その間に武、優子、茜親子が座った。


「初めまして、正志さんの妻で和樹の母親の雪子です。」


「和樹がお世話になってます。」


雪子が鉄二と妙子にあいさつしている。


「あいさつなんかせんでええ!」


正志が不機嫌な声をあげた。


「でもあなた。」


雪子は渋々、正志の前に座った。


「ふん!」


鉄二も不機嫌そうにそっぽを向いた。


沈黙の空気が流れる中、優子が口を開いた。


「っでお兄ちゃん、いきなり和くん連れて帰るっていうのは乱暴すぎるんとちがう?」


正志もそっぽを向いたまま


「こんな店に大事な息子置いておけるか!」


「でも和くんはコックになりたがってるのよ。」


「はん!それやったら他にもええ店なんぼでもあるわい!」


「わざわざ頑固オヤジの店なんかで働く必要ない!」


「でも和くんはここで・・・・・・・・・」


「もうええ!」


優子の言葉を鉄二がさえぎった。


「こんな奴にはなんぼ言うてもわからん!」


「子供を親の所有物と勘違いしとる奴にはな!」


この言葉を聞いた瞬間、正志は再び立ち上がろうとした。


それを雪子と武親子があわてて止めた。


「チッ!」


正志は舌打ちして仕方なしに座った。


それでもものすごい形相で鉄二を睨みつけると


「そのセリフそっくりままあんたに返したる!」


「俺の言うことに一切聞く耳もたんと、頭ごなしに反対したあんたにな!」


鉄二は正志を睨み返して


「自分の息子が将来性のない仕事につくって聞いて、反対せん親がおると思てるんか。」


「なんやと!」


正志はまたも憤慨しかけたが、周囲の様子を見てやめた。


後は不機嫌そうに壁のほうを見て何も話さなくなった。


再び、真田亭に沈黙の空気が流れた。


それを鉄二が破った。


「おい、そろそろ時間や、店開けるぞ!」


「あっ、はい。」


和樹は両親を気にしながらも返事をした。


「続きは店終わってからじゃ。」


「とっとと裏にでも回れ、商売の邪魔じゃ。」


鉄二の言葉に正志は


「ふん!」


鼻を鳴らして立ち上がり裏に向かった。


雪子は鉄二に一礼すると後に続いた。