「誰じゃ、店で騒いどる奴は!」


鉄二はドアを開けるなり、いきなり怒鳴った。


だが騒いでいる人間を見て、さすがの鉄二も固まった。


いっしょに帰ってきた妙子も


「た、武?」


それだけ言うのがやっとであった。


「お父ちゃん、お母ちゃん!」


帰ってきた2人を見て、武も声をあげた。


鉄二は次の瞬間、顔を真っ赤にして


「何がお父ちゃん、お母ちゃんじゃ、このボケナス!」


「17年間もどこほっつき歩いとったんじゃー!」


武に突進しようとした。


「お父ちゃん!」


「おじいちゃん!」


優子と茜が懸命に鉄二を止めた。


「ゴメンなさい、ゴメンなさい!」


武は和樹の後ろに隠れて謝った。


「ゴメンで済んだら警察要るかー!」


鉄二の怒りはおさまらない。


「ほら武、ちゃんと説明しなさい。」


妙子が間をとりなした。


「それは私から説明させてもらいます。」


そのとき1人の中年紳士が真田亭に入ってきた。


「あっ、敏明くん。」


武が声をかけた。


「敏明くんじゃないよ、タクシーのお金払ってる間にさっさと行ってしまって!」


「ゴメン、ゴメン!」


敏明くんと呼ばれた中年紳士はヤレヤレといった表情だ。


「どちら様ですか?」


優子が尋ねた。


「申し遅れました、私、武くんのマネージャーをしています関口敏明と申します。」


「マネージャー・・・・・・・・・・・ですか?」


茜は不思議そうな目で関口を見た。


関口はそういうリアクションは予想していたのか


「ははは、わかってます、料理人にマネージャーっておかしいですからね。」


「もちろん、その辺りのことも含めて説明させてもらいます。」


「よろしいでしょうか?」


関口は一同の様子を伺った。


「はい、わかりました、お願いします。」


優子が代表して答えた。


鉄二もいつの間にか怒るのを忘れて、関口のほうを見ていた。