30分後、遠藤茜が到着した。


その間に先ほどのメールの発信位置がわかった。


阪急梅田駅近辺である。


数分間、電源が入れられ再び切られた。


もちろんわかったからといってどうすることもできない。


正午近くに阪急梅田駅近辺には何万という人々がいる。


そのほとんどの人が携帯を所持しているのだ。


探し出すのは不可能であった。


この時点で大阪府警にも協力が要請された。


事件は大阪も又にかけて展開されいく様相を呈し始めた。


茜はすでに信貴から協力の内容を聞かされているのか、やや青ざめた顔をしている。


「遠藤くん、ご苦労さん。」


「申し訳ないけど頼むよ。」


信貴が声をかけた。


「はい、わかっています。」


茜は事務的に返事をした。


そのとき、刑事が2人リュックサックを持って入ってきた。


とくに指示されたわけではなかったので、近くの量販店で購入してきたようだ。


5つとも同じ赤いリュックサックである。


リビングではさっそく、お金の詰め替え作業が始まった。


小野田家の面々や豊田警部が作業を見守っている。


粛々と作業は進みさほど時間はかからず、リビングに1億円入りリュックサックが5つ並んだ。


あとは犯人の指示を待つだけだった。


だが・・・・・・・・・


次の指示がなかなか来ない。


全ての準備は午後1時には整っていた。


それからすでに2時間が経過しようとしている。


信貴はまたもイライラしたように、何本ものたばこを灰皿に押し付けた。


「あなた!」


千秋に注意され


「わかってる!落ち着いてるよ!」


と言ったその表情は苛立ちに満ちていた。


陽菜はそんな父をヤレヤレといった感じで見ていたが、ふと思いついて


「犯人は何かを待ってるんでしょうか?」


と豊田警部に話しかけた。


「なぜそんなふうに思うんです。」


豊田警部はこの家で一番冷静さを保っている少女の意見を興味深く聞いた。


「だって身代金を集めるのにはギリギリの3日しかくれなかったのに、実際お金を受け取る段になって気長になるなんておかしいかなって。」


「だから今、連絡が遅いのは何かを待ってるんじゃないかって。」


「なるほど。」


豊田警部は関心したようにうなずいた。


「っで、陽菜さんは何を待っていると思いますか?」


今度は逆に陽菜に質問してみた。


「そうですねぇ~」


と陽菜が考え始めたとき、信貴の携帯が鳴った。