パワースーツを装着した隆一は


「今まで隠しててゴメン。」


その声は学校のグラウンドで聞いたのと同じ機械の声であったが、あの時とはちがう温かみのようなものを感じた。


「ううん。」


美由紀は小さく首を振って応えた。


しかしそれ以上は何も言えなかった。


あれほど正体を知りたかったのに、いざ目の前で変身されると言葉がでない。


そんな美由紀の雰囲気を察したのか


「何から話そう?」


パワースーツ姿の隆一は照れたように頭をかいた。


その姿が妙に滑稽で思わず吹き出す美由紀であった。


笑ったことで気持ちがほぐれたのか、美由紀はゆっくり話し始めた。


「マイケルさんに技術提供したのね。」


「まあね。」


「それで正体も明かした。」


「うん。」


「だから私にも正体を教えてくれたのね。」


「うん、君の言うとおりだよ。」


隆一の言葉を聞くと美由紀は納得したようにうなずいた。


「ただ無償で提供したわけじゃないよ。」


「お金を取ったの?」


「そう、つまり技術を売ったのさ。」


「何のために?」


美由紀は興味があった。


隆一が自分の欲望のためにするとは思えなかったからだ。


隆一はその質問には答えず


「ねぇ、100年後の人類ってどうなっていると思う?」


「はぁ?」


突然、抽象的な質問をぶつけられ美由紀は戸惑った。


「急にそんなこと聞かれても・・・・・・・」


「ははは、ゴメン、ゴメン、質問が大雑把すぎたよね。」


「じゃあ、100年後の地球環境は今より良くなっていると思う?」


今度の質問は答えやすかったのか


「そんなことは考えられないわ、今より確実に悪くなっていると思う。」


美由紀は即座に答えた。


「だよね。」


隆一もその考えに同調した。


「そう考えると100年後の人類についてもおのずから答えがでる。」


「今でも異常気象でハリケーン、津波、地震なんかで多くの人が苦しんでるよね。」


「食糧難の問題も深刻だし。」


「これよりさらに環境が悪化したら死滅するとは思わないけど、多くの人が人生をまっとうできずに死んでいくと思う。」


「僕はそんな未来を変えるためにスペースコロニーを作るつもりなんだ。」


それまで黙って聞いていた美由紀は驚きの表情をした。


「そんな技術まであるの?」


「うん。」


「だからその資金を調達するために重力制御の技術を1兆ドルでマイケルに売ったんだ。」


「1兆ドル?」


美由紀は再び、驚きの表情を示した。


「そう、だからこれからは美由紀ちゃんにも協力してほしいんだ。」


「重力波理論もしっかり学んでもらって。」


隆一の申し出に美由紀は


「喜んで!それはこちらからお願いしたいぐらい。」


「そう言ってくれると思ったよ。」


隆一は微笑んだが、美由紀には見えるはずはなかった。