次の日の昼休み。


隆一は学食でそわそわしていた。


朝、学校に来るとさっそく美由紀からメールが入った。


昼休み、いっしょにお昼を食べようという内容である。


ユリとの打ち合わせどおり、OKの返事を返した。


信也と武彦にも声をかけた。


2人には美由紀から‘‘3人そろって’’誘われたという事にしておいた。


これ以上、妬まれるのはコリゴリである。


そんなわけで3人で待っていると、程なくして美由紀があらわれた。


と同時にユリもやってきた。


隆一に弁当を届けるという口実だ。


思いがけないユリの登場に信也と武彦も驚愕の表情である。


2人同時に隆一たちのテーブルに近づいてきた。


美由紀は見慣れない女性の登場に警戒心をいだいているようすだ。


ユリはそんな美由紀の気持ちを見越して先に口を開いた。


「こんにちわ、美由紀さんですよね?」


「え、ええ。」


突然、自分の名前を呼ばれ、美由紀は戸惑った。


「あなたひょっとして・・・・・・・・」


「ええ、リュウの彼女のユリです。」


ユリは美由紀の前で、はっきりと宣言するように言った。


美由紀はユリの言葉を聞くと探るような目でユリを見つめた。


例の魔人は2人。


日本人男女の可能性も示唆されている。


隆一が漆黒の魔人ならば、ユリは白銀の魔人。


美由紀は向こうから、研究材料が飛び込んで来たことを大いに喜んだ。


もちろんそんなことはおくびにも出さないが。


しかしユリは美由紀の体温、脈拍、呼吸数、などから喚起の状態であることを察知していた。


これから三角関係の修羅場に突入するかもしれないのに、喚起の状態になる人間などいない。


このことから美由紀の目的は、自分たちの正体を探ることであると確信した。


2人はどちらからともなく


「よろしく!」


と穏やかに挨拶を交わしていた。


だがその視線は激しい火花を散らしていた・・・・・・・・。


隆一はただただ2人のやり取りを見ているだけだった。


2人が席に着き食事が始まると、美由紀がいきなり仕掛けてきた。


「ねぇ、昨日また例の魔人があらわれたんですってね。」


皆に話題を提供しているようであるが、その視線はユリに注目していた。


ユリは表情を変えずに


「そうそう、テレビつけるとそのニュースばっかりでぜんぜんおもしろくないですよ。」


「ユリさん、魔人に興味ないの?」


美由紀は話題をユリに向けた。


「ええ、別に私に関係ないことですし・・・・・・・」


ユリはサラリと流す。


美由紀がさらに話を進めようとしたとき、周囲がざわめきだした。


信也が近くにいた友人に声をかけた。


「何かあったのか?」


「ああ、誰か屋上から飛び降りようとしてるらしいよ。」


「マジで!」


武彦が素っ頓狂な声をあげた。


「行ってみましょう!」


ユリがみんなを誘った。


このときチラリと隆一を見た。


隆一も目でうなずいた。