マンションに戻った隆一とユリは一休みしていた。
さすがにジャンボ旅客機を運んだのは、精神的にこたえたからだ。
隆一はコーヒーを飲みながら、何気なく携帯を見ると留守電が入っている表示があった。
相手は美由紀である。
「留守電?信也くんか武彦くん?」
ユリの質問に
「あ、いや、他の友達。」
隆一は何となく誤魔化して、メッセージを聞いた。
『もしもし、美由紀です。』
『さっきすごい勢いで飛び出して行ったから、何かあったのかと思って心配になりました。』
『もし良ければ連絡もらえるとうれしいです。』
ユリには申し訳ないが、思わず顔がにやけてしまった。
「あっ、ちょっと電話してくる。」
隆一はユリにそう言ってマンションを出た。
さすがにユリの前では電話しにくい。
美由紀の番号で発信ボタンを押す。
2,3度の呼び出し音ですぐに美由紀は電話に出た。
「もしもし笠原だけど、留守電聞いたんで。」
「あっ、隆一くん?もう用事は済んだの?」
美由紀の明るい声が聞こえてきた。
「えっ、まあね、それより心配してくれてありがとう!」
隆一は留守電の礼を言った。
「ううん、ちょっと気になっただけだから。」
「私の方こそ連絡くれてありがとう!」
「い、いや~!」
隆一は満面の笑みである。
「また学校で会えるかな?」
「も、もちろん!」
隆一は即座に答えた。
「じゃあ、また明日学校で会いましょうね。」
「うん、楽しみにしてるよ。」
電話を切ると隆一は深呼吸を一つして顔を引き締めた。
電話を置くと美由紀は笑みをもらした。
やはり思ったとおりだった。
今、ニュースでジャンボ旅客機が2体の魔人に救われたと速報を流している。
詳しいことはまだわかっていないが、日本時間で言えば1時間ほど前、2体の魔人は飛び去ったようである。
今のタイミングで隆一が電話をかけてきたことは偶然ではない。
少なくても美由紀はそう考えていた。