中東で起きた日本人ジャーナリスト誘拐事件解決から数日が経過した。
巷ではテロ組織を壊滅させ、人質を救出した2体の魔人についてのニュースでもちきりであった。
瞬間移動で現れ、自由に空を飛びまわり、どんな攻撃も跳ね返すバリアを操り、手や指からは強力なエネルギー弾を発射することができる。
まさにスーパーマンも真っ青な能力である。
救出されたジャーナリストの証言によって、日本人男女の可能性も示唆されているが、それもフェイクかもしれない。
いや人間かどうかさえも疑われていた。
異性人の可能性も充分に考えられるのだ。
とにかくその正体はまったくの謎であるため、マスコミはもちろん各国の諜報機関も躍起になって彼らの行方を追っていた。
その肝心の彼らは・・・・・・・・・・
「あ~リュウ、リュウ!」
朝から励んでいた。
一段落ついた後、ユリがベッドから離れた。
「じゃあ、朝ごはんの支度するね。」
すっかり朝の秘め事に慣れっこになったユリは、事が終わったあと朝食準備の仕上げにかかるようにしていた。
2人で朝食をとりながら
「ねぇ、今日は1時限目の講義いいの?」
ユリが何気なく訊いた。
「ああ、1時限目の講義は火曜だから。」
「えっ、今日、火曜日だよ?」
ユリの言葉を聞いて隆一は青くなった。
「あ~曜日まちがえてた、昨日、祝日だったんだ!」
時計を見ると講義の始まる10分前。
ここからどんなに急いでも大学までは10分はかかる。
遅刻は決定的であった。
「こうなったら・・・・・・・・」
隆一は大あわてで着替えながら呟いた。
「ワームホール使うの?」
ユリはけげんな表情である。
「わかってるって!」
隆一はユリの言わんとすることはわかっていた。
今、プライベートでワームホールを使って、誰かに見られたらたいへんなのだ。
「午前中はあんまり人がいない旧校舎の裏庭に開くから。」
「あそこだったら見られることはないからさ。」
「だいじょうぶだって!」
隆一はそう言うと玄関で靴を履きワームホールを開いた。
念のため、ワームホールの向こう側を見たが誰もいる様子はない。
「ほら、誰もいないだろ。」
隆一が得意そうに言ってもユリはまだ不安そうであった。
それでも隆一に弁当を渡し
「くれぐれも気をつけてね。」
再度、注意を促した。
「うん、気をつけるから。」
隆一はそれだけ言い残してワームホールをくぐった。
ワームホールをくぐると、そこは見慣れた旧校舎の裏庭である。
一応、周囲を見渡したが人のいる気配はなかった。
隆一は安心して1時限目の講義が行なわれる教室に急いだ。
しかし・・・・・・・・
今の行動は一部始終目撃されていた。
そのことに隆一はまだ気づいていなかった。