だけど結局、最後には壊れてしまう。腐ってしまう。
それが、形のあるものの、物質というさだめだ。
あたしはそう思うの。いつのまにかそう思っていた。
大切すぎて臆病になる。
終わることが嫌だからこそ、終わることを終わらないようにするために考える。
だけどあたしは、唯一という立場が欲しいのだ。
誰かが代わりになれるのなら、それはあたしでなくたもいい。
たった一つしかない特等席をあたしのためにだけ空けておいてくれるってこと。そうしてもらえる人でありたい。
そのためにはかたちが必要なのかな。
あたしはそうしてもらえるんなら、形なんていらないのだ。
顔パスで、どうぞって言ってくれるんなら
あたしはきっと、君にとって特別になれてるんだろうって思えるから。
でも、それはあたしだけで、君がほんとはそうじゃないのなら、ずれてる感覚がするのかな
一人の時不安だったりするかな。
あたしが恐れてるのは失うことで、形を欲しがってなくしてしまうことだけだ。
あたしは、独り身ってことに慣れ過ぎてしまって、いざ、二人のかたちができたとき、
容易く壊れるものだと勝手に思ってしまってるんだと思う。
そんなことないなら、なりたいよ。
あたしだってあたしのこの思い込みのせいで不安なのだ。
あたしが特等席だって思ってる君の隣は、別に君が特等席のつもりで空け渡してくれてるんじゃないのかもしれないって思うと
虚しくてたまらなくなる。
君は優しいから嘘ついてるのかもしれないとか、気を遣ってくれてるのかもとか
そんなことを考える。
でももし、ほんとに特等席のつもりで居てくれてるなら、あたしの思う不安自体が君を傷つけるでしょ。
うん、だから。そろそろはっきりしないとだめなのかなって、思い始めた。
何も変わらなくていい。変わるのはあたしだと思うし。
なくすのが怖かったんだな、と、気づいたんだ。
あたしは君のことより、自分のことばっかり気遣って生きてたんだなって気付いた。
そのせいで全然自分らしくなくなってしまった。
あたしはわがままな昔のあたしのままだよ。
ほんとは何にも変われてないんだよ。
君が誰かと楽しそうにしてると少し寂しいんだよ。
でもあたしを好きでいてくれてるならそれでいいんだよ。
昨日、君がくれたネックレスをなくしたってことに気づいた。
その時ね、あ。これは、君が静かにあたしのそばから消えていこうとしてる証だって思った。
大切にできてなかったあたしのせいだって思った。
だから心の中が空っぽになったまま一日中仕事して、だけど諦められなかった。
きっとあるよと思おうとした。落とした感覚がしたのも事実だけど、探さなくちゃと思った。
そしたら見つけた。
安心しすぎて少し泣けた。
君はまだ、あたしのそばにいてくれてるんだと思った。現実は何にも変わらないのに、不思議と確信してた。
そしたら君から連絡が来てた。
いつもは木曜日に連絡なんかしてこないのに。
会いたいと思ってくれた。それだけで幸せでしかない。
忙しくてなかなか会えそうもないけど、その気持ちだけここにあれば
あたしはもう少し前に進む方法を考えることが出来そうだよ。
会えない間に取り戻そうと思うんだ。
エゴで歪んでた君への気持ちを、汚いもの取っ払って、もう一回綺麗なものにして
今度会いたいの。