「沈みゆく夕日は止められない
 ならば綺麗と見送りましょう」

 

これは,劇場版北斗の拳の冒頭で出て来た台詞なのですが,僕はこの1シーンがとても好きです.不治の病に侵されている恋人ユリアと主人公ケンシロウのやりとり,

ケンシロウ「もし病と闘えるのなら,俺はこの命を懸けて・・・」
ユリア「そんなに悲しい顔をしないで.沈みゆく夕日は誰にも止められないの.ならば綺麗と見送りましょう」

不器用なケンシロウの愛ゆえの苦悩と,慈母の星の元に生まれたユリアのとても心惹かれるシーンなのですが,ここの言葉にはこの世を生きていくための教訓,世の道理が垣間見えているような気がします.

「沈みゆく夕日」とは,世の不条理さ,人の手の及ばないところのものを象徴しています.どんな素晴らしい時もいつか終わりが来る.辛い光の当たらない時もある.失いたくないものを失うこともある.どんなに欲しても手に入らない時もある.

自分という存在は,世の中の流れの中ではあまりにも無力であり,そこから生まれ光を享受し,その闇に耐えている存在なのであると.

自分の力の及ばない,変えられない事実に関して僕たちはどのように接していけば良いのであろう.

「ならば綺麗と見送りましょう」.その光に強く感謝してその喜びを噛み締めよう.そして,闇の中では毅然たる態度で明日来る光を信じていよう.

どうしようもないことに関してあまりに敏感になると,自分を見失う.この世界の今をありのままに受け止めて,その中で自分には何ができるのかということが大切なのである.

「どんな暗闇の中でも自分の光を失わず輝き続けられたら
 そして,誰かの今を照らすことができたなら」

なんて,臭いセリフで締めくくっておきます.